第16ニャ【お父ちゃんの威嚇だニャン】


 十二支レースに出る為、町を出ると決めたのはいいんニャけれど、いまだに首を縦に振ってくれニャい存在が約一名、そう、お父ちゃんニャ


 今もぬ子の前で激おこニャ


「シャーッ!!」


 ほら、めちゃくちゃ怒ってるニャ。お父ちゃんがシャーする姿ニャんて、川で釣ったおさかにゃを泥棒猫に盗られた時くらいしかニャいよ

 あの時の顔は今も忘れられニャい。お父ちゃん、おさかにゃ好きだもん


 と、そんニャ事はさておき、ぬ子の隣で眼鏡の位置を調整するすばり

 すばりは激おこ状態のお父ちゃんに猫じゃらしをけしかけニャがら口を開く


「落ち着いていただこうか、ぬ子の父上殿?」


 お父ちゃんは一瞬だけじゃらされそうにニャりながらも威嚇を止める気配がニャい。かわりにぬ子がじゃらされたニャン♪

 そんニャぬ子に猫じゃらしを手渡して来たすばり。ぬ子は反射的にソレを肉球にとり、一人で遊ぶニャ〜。その最中も二人の睨み合いは続いてるけど、今は夢中だから声だけ聞いておくかニャ


「何度も話をした通り、我とぬ子はこの町を出て十二支レースとやらに出ると決めたのだ。いくらシャーされようが、これはぬ子が自分で決めた事。そして我もまた、ぬ子に協力すると自分で決めたのだ。成り行きだが」

「シャラップラッシャー!!」

「……明日には町を発つ。断言しよう、父上殿が反対しようが、ぬ子は行くだろう!」


「シャ……!?」


 猫じゃらし、飽きたニャ

 あれ、お父ちゃんのシャーが途切れた。お父ちゃん、にゃんだか哀しそうな顔だニャ

 言葉に詰まったお父ちゃんの代わりに、ずっと黙ってたお母ちゃんが重い口を開いたニャ


「ぬ子……お父ちゃんの気持ちが何故わからないの? 貴女まで失ってしまったら……違うわ、私だってそう、ぬ子が居なくなるなんて考えられないの。あの子みたいに……」


 ぬ子はその先の言葉が聞きたくニャくて、つい大声で叫んでしまったニャ

「お姉ちゃんは死んでニャんかニャい!!」って


 ついつい大声出しちゃったニャ。お母ちゃん、後ろを向いて泣いちゃったニャ……

 どうしよう。ぬ子は二人に頑張って来いって、そう言って見送って欲しいだけニャ


 それだけニャのに……


「もうお父ちゃんもお母ちゃんも嫌いだニャ! ふニャァァーーーン!!」


 それニャのに、にゃんでこんニャ事言っちゃうんだニャーー……


 しかも、ぬ子の肉球がお父ちゃんの顔面にめり込んでるニャ。惨状に気付いたぬ子は、と、とりあえずその場から全速力で走って逃げたニャ!

 勿論、四足ダッシュでニャ


 後ろからお母ちゃんの呼び止める声が聞こえたけれど、振り向きたくニャいもん!

 またやっちゃったニャ、お父ちゃんに猫パンチ


 と、そんニャ事を考えてダッシュしていると、いつの間にか町の出口まで来てしまったニャ。ぬ子はそこに建つ煉瓦造りの門に飛び乗って、にゃにもニャい町の外に視線をやるニャ


 真っ白な雪、その他にはにゃにもニャい


 ずっと寒さに震えてニャがら、このままここで生きて、死んでしまうニャんて……嫌だ


 ぬ子は、もっと色んニャ事、知りたいニャ。短い猫生人生、悔いニャく生きたいニャ


 その為に神様の門まで行って、猫を認めてもらいたいニャ! コタツがにゃくても生きていけるような町にしてもらいたいんだニャ!



 はぁ、お父ちゃん、痛かったかニャ……?

 怒ってる……かニャ?


「…………お姉ちゃん……どこ、行っちゃったニャ……」


 ……っ!? はっ!! こ、これはっ!? て、敵の気配っ!!


 ぬ子は背後に忍び寄る敵の気配に気付いて門の上で半回転したニャ。町の方を向いたぬ子の視界に映ったのは、敵、じゃニャくて、


「……ブピュラー!!」


 鼻血はにゃぢが噴き出したままぬ子を追って来た、お父ちゃんだったニャ。ぬ子は気まずい気持ちにニャって、その場をはにゃれようとしたけど、


「ヌコォォォォォップュルリラーーーッ!!」


 お父ちゃんに、ぬ子、待ってくれ! って呼び止められてしまったニャ

 無視して行けば良かったんだけど、やっぱり、そんニャ事出来ないニャ……

 ぬ子は向けていた背をもう一度反転させて地面に降り、鼻血はにゃぢが止まり始めたお父ちゃんを見上げたニャ


「ゴロゴロニャーゴ」


 何々にゃににゃに? あの少年の熱意に免じて、旅を許可する、って……え!?


「お父ちゃんっ!?」

「ニャラス、ララニャラ」ぽりぽり

「えっ!? すばりがそんニャ事をっ!?」


 すばり……ぬ子の為にそんニャ事まで。よくわかんニャいけど

 と、ぬ子がそんニャ思考を巡らせていると、遅れてお母ちゃんとすばりが追いついて来たニャ


 ——



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