第45話○一生懸命から繋がる千載一遇のチャンス
笑うなら笑えばいい……
彼女が人とは思えぬ行いを繰り返した後、俺は冷静になろうと心を落ち着ける。
【なんのことはない。いつもと一緒だろ?】
彼女が冷酷な悪魔のような行いをするというのは全くもっていつもと変わらないではないか。
だって、そんな彼女だから俺は別れる決心をしたのだろう??
そう。
いつもと一緒なのだ。
人の心なんか考えない、自分が笑いたいときには何があろうと笑う。
そんな彼女だからこそ俺は、彼女からの別れを実現しなければいけない。
よし!
落ち着いてきた!
冷静にいこう!
だからそんないつもの行動だけに俺は次に来る彼女の行動と言うのが手に取るようにわかるのだ。
どうせ途中で力を抜いて入れて俺の顔と反応を楽しむ算段なのだろ?
そして、そんな俺を彼女は思う存分楽しんだ後は、これ見よがしに優越感に浸りながらケーキをとる!
そう言った行動に繋がっていくのだろう?
もうお前のパターンと言うものは分かっているのだよ!
そう思い、どうにかこうにか待ち構えていた俺。
そして、待ち構えていたと言うことは当然、対策と言うのも考え付くのが俺と言う完璧な種族なのだ。
とは言っても彼女の今回の戦いはお互いの防御を許さない至近距離での攻防戦となっている。
なので、俺は考え方の方をガラッと変えることにした。
簡単に言うと……
もう、ね!
俺は腹をくくったのだよ!
俺は今回、お前の横暴にはどうあっても対抗しなければいけない。
弱者がいつまでも権力の下に大人しくついているなんて思うなよ!
冷えや粟ばかり食べさせられている俺だって、時が来たら立ち上がるんだからな!
そう思って考えた作戦がこれだ!
わんつーすりー!
名付けて【ケーキと一緒に心中しちゃおう大作戦!】
こっちもねぇ。
いくら苦悶の表情を浮かべているとは言え、全くもって動きがとれませんと言うことではないのだよ。
喋る必要もない、表情も気にしないと言うことであれば、多少の我慢をしながら行動と言うのは可能なのだよ。
それに今の状況、姿勢が不利と言うのは潔く認めておこう。
だがね……
彼女の方はフリーなのは左手一本なのに対して、俺の方は両手がフリー。
これの意味が分かるだろうか?
今の距離から捨て身の覚悟で手を伸ばせばどうなると思う?
そう、こっからなら死にもの狂いで頑張れば何とかケーキまでなら手が届くと思うんだよね。
別に届くのは手のひらとか言う贅沢は言わない、指先一本でも全く問題はない。
きっとお前のことだ『お主の抵抗などは片腹痛い。たかが指先一本ごときが届いたところで何がある?』
そう思うんだろうな。
そしてそのまま深くまで物事を考えない君は神の右手を発動させるのだろう?
いいだろう!
やってみなさいよ!
貴方のその欲望を俺の全身でもって受け止めてやろうではないか。
ただし、その時は貴方の食べたかったケーキはこの世にはいないだろうけどね。
お前が食べたいケーキをたかが指一本でメチャクチャにしてやろう。
本来であれば、こういうルール無用のやり方は好きではないのだが、どうせ俺の口にはいることはないケーキ。
こうなったら破れかぶれだ!
目にもの見せてくれる!
そう思いながら彼女の次なる行動を待っていると……
先程、右手の力を込めて俺の顔を面白いと大爆笑した彼女。
俺の予想通り再び右手の力を抜いた。
ほら見たことか!
どうせ、彼女は直ぐに再び右手の力を込めて俺の反応を楽しむとか言う馬鹿げた行為を繰り返すのだろう?
俺はもう腹を括ったのだよ。
こちらの方のダメージは甘んじて受けようではないか。
大洪水さえ引き起こさなければ良いのだよ。
相手は進化と言うものを諦めた所詮四本足!
いつまでたっても理性と言う文字を覚えることはない下等動物なのだよ。
貴様には今の俺の覚悟など一生かかっても分からないだろうな!
己の勝利のためならば命をも懸ける心意気。
一生懸命!
俺はそう思い、そして待ちに待った一瞬とはいえ自分が自由になった瞬間、この千載一遇のチャンスを逃すことなかれと俺は自分の右手をめい一杯広げた。
ゴメン!
ケーキさん!
短い間でしたが貴方と過ごした素敵な思い出は絶対に忘れません。
本当はこんなことはしたくないんだけど……
でも仕方がないんです。
他に方法がないの、魔王の支配から逃れ平和な世界を取り戻すために犠牲となってください。
と言う気持ちでいると……
であえー!
であえー!!
くせ者じゃ~!
俺の右背後から何やら侵入者の影が飛び込んできた。
我が城内は予期せぬ訪問者の存在に一気にざわめき始める。
えっ?
何奴!?
もはや防御を捨てた城とは言え、それは勝利を捨てたわけではない。
なので当然、侵入者の影があればその存在を先ずは確認するのが先決なのだ。
そう思った俺は直ぐに後ろを振り向いて確認した。
確認してみると、そこには彼女の左手がいたのだ。
えっ?
彼女の左手が背後からの侵入者?
なんで?
そう思った瞬間……
俺は、自分の右腕は動きを止めていた。
一瞬の戸惑いが招いてしまった、僅かな時間……
だが、彼女の方は違った……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます