第32話○魔王の考え?
恐らく魔王はそれほどまでにケーキの魔力に魅了されていると言うことなのだろう。
実に恐ろしいケーキに思えるが、それはそれで、恐らく魔王であるからと言うことなのだと思う。
だが、それは魔王の隙を表しているともとることができる。
俺の方としては、目先のケーキよりもメインの料理だ。
そして見てろよ、魔王!
このケーキを足掛かりに必ずやお前の牙城を切り崩してやるからな!
よぉーし!
燃えてきたぜぇ!
先程までは一直線にケーキを見ていた魔王の目。
それが今は俺の瞳を一直線に向けている。
今の俺に彼女の魅了は通用しない。
冷静に状況だけを分析できる自信がある。
そしてそれは彼女の方でも俺の精神状態には気づいているはずだ。
だから彼女が俺を見る視線というのは、彼女がそれほどまでにケーキを食べたいということを表しているのだろう。
残念なヤツめ……
お前がそういった目を俺に向ければ向けるほどに、お前は墓穴を掘るということに気づいていないのかい?
今まで散々、欲望のままに行動をしていたと言うことなのだろうね。
今度は俺がお前に、恥辱と言う言葉の意味を教えてあげましょう!
本来であれば彼女の目から放たれる怪光線の前に俺は最大限の注意をはらっていかねばならない。
だが、だからと言って防御ばかりを選択していては、新たな道を切り開くこともまた不可能だろう。
そう思った俺は、彼女に対して捨て身の攻撃をしかけることにした。
「んー、唐揚げってどのくらいの量ある?」
直後、二人の周囲が一瞬にして静まり返ってしまった。
彼女の方もなるべくなら手札を晒すことは避けたいはず。
だが、だからと言って俺の要求をはね除けると話し合いは平行線となる。
もしかするとそれもありなのかもしれないが…
だが今の彼女に、そこまで深く考える余裕と言うのがあるのだろうか?
恐らくは、ここで唐揚げの量を正直に俺に明かすということは、その後の交渉にどういった影響を及ぼすのか考えているのだろう。
魔王!
お前の考えなど、はっきり言って全てお見通しだぞ!
「えっ…気になるの?」
彼女は俺の目を見ながら訪ねてくる。
実に白々しい表情だ。
もちろん気になるに決まっている。
だって、今回の取引で唐揚げという条件を出したのは彼女だぞ。
俺が彼女の立場であったら、唐揚げという条件を出す場合、唐揚げの残量というのは残り少ないはずだ。
残り少ない量を犠牲にしてケーキをとりたいと思うはず。
それに多い場合、今度は量の駆け引きというのが存在するはずで、そう言った交渉だと相手に価値をつり上げられる可能性も出てくる。
そして特に今回の場合、明らかにケーキを食べたい気持ちというのが彼女の方に見えている。
それも寧ろ隠す気持ちを疑いたいほどに見えていると言えるので、彼女主体の交渉というのはやりにくいはずだ。
だとすると、量的には唐揚げの個数が少ない方が彼女にとっては有利な交渉はしやすいと思うのだが……
「んー、このくらいかなぁ~」
そう言って彼女が見せてくれた唐揚げさんたち……
「あれっ…?マジで?」
今まで平静を保っていた俺だったのだが、その時思わず声が漏れてしまった。
それは彼女が見せた唐揚げの量と言うのが、自分の期待からは大きく外れたものだったからだ。
それもこの場合は良い意味で。
最近では何でもかんでも【良い意味で】と使いたがる人もいると聞く。
良い意味での殺人犯?
お前、人を殺すという行為に良い意味なんて使えるわけがないだろう。
良い意味での怪しい薬?
薬は使う前にどんな影響を及ぼすのかを入念にチェックしなければいけないのだから、使う前に良い意味もクソもないだろう。
良い意味での核兵器?
核兵器に良い意味もクソも無いだろう……
良い意味での逃亡犯?
プライベートジェット機を使って元特殊部隊四名の手引きにより外国に逃亡のどこに良い意味とか使えるんだよ。
言いたいことがあるなら、法廷で声高々に宣言すれば良いじゃないか。
法廷の記録と言うのは傍聴人の耳元には必ず届くのだ。
それも絶対に改竄できない記録としてな。
発言した者の言葉が真実であるならば、傍聴人の中の誰かが後は動きを見せるだろう。
(あれ?この話、大丈夫か?もしかしたら神の裁きを受けないだろうか……正直ここまで書いて裁きは勘弁だ……だが、もしも削除されていたらごめんなさい。その時は作者のページで確認してください)
全く何でもかんでも【良い意味で】と言う言葉が使えると思っているのだろうか……
そんなことがあるわけがないだろうが!
と言うことを普段から思ったりはしてはいるのだが…
それは今回に限っては当てはまらないと思っている。
ほんとだ。
嘘ではない!
何故ならば今回の場合、【良い意味で】と言う言葉は本当の意味で良いととらえることができるからだ。
決して失点を和らげるためのカモフラージュの意味での【良い意味で】とは違う。
間違いない。
あれほどの唐揚げさんがたむろしていると言うことであれば、俺にとってかなり有利な交渉をすることができる!
俺は、心の中で思いっきりガッツポーズをしていた!
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