第12話・試験結果
森を出たあと、シェルターの場所に戻った俺は、取説と首っ引きで、ひたすらDELSONの機能の充実を謀る事にした。
もう、あんな危険な目に遭遇したくはない。
そう思ってはいても、実際問題なにが起こるかわからない。
ならば、徹底的に自己防衛を考えなければいけない。
そこで、次の機能を作り出した。
一つ目は「自己防衛機能」
これは今ある「レーダー機能」に「汚破損防止機能」を紐付けしたものだ。
この「汚破損防止機能」はDELSONに汚れや破損の危険が迫っている時などに、魔力による一種のバリアを発生させ、これを防ぐ機能だ。
これを利用して俺やDELSONに攻撃などの危機的状況に陥った時に、自動的に周囲1mの範囲で強力な魔力バリアを発生させて防御するいう機能とした。
そして、二つ目は「自動迎撃機能」
これも「レーダー機能」に「盗難防止機能」を紐付けして制作した。
「盗難防止機能」はDELSONが盗難や破壊行為が行われようとした時、その行為を実行したモノに対して自動的に攻撃するという機能。
これを紐付ける事で、俺が危機に気がつかなかった場合などの時にDELSON自身が勝手に迎撃してくれるようになる。
この二つの機能があれば、さらに俺の安全マージンが広くなること間違い無しだ。
あとは如何に俺自身がDELSONを使いこなすかに掛かってくる。
今夜と明日の時間を利用して、じっくりと修練と新機能開発に取り組んでいこう。
と、思ってはいたんだけど……。
翌日は朝からシェルターでゴロゴロしていた。
いやぁ~、なんかさぁ、面倒になっちゃてぇ~
そこら辺の草を大量に刈ってきて寝床をフカフカにしたら、やる気も何もなくなっちゃったんだよねぇ~。
イイじゃんちょっとくらいサボったってさぁ~
んで、シェルターで「ひきこもり」やってみたわけだ。
これぞ、「ひきこもりアウトドア」?。
ひきこもってるんだか、ないんだか、よくわからないが、気にしない。
寝転がりながら、取説を読みながら携帯食をモソモソ食ってダラダラした。
起き上がるのは、トイレの時だけ。
いやぁ~自堕落で幸福な一日を過ごしちゃったんだわ。
さて、三日目の試験最終日。
ヘイゼル爺さんが俺を迎えに来たのは、昼近くになってからだった。
「よう、生きてるようで、何よりだな」
そう、にこやかに話しかけてくる爺さん。
「いやぁ、ちょっとドジって死にかけましたよ」
「そうか。じゃが、怪我もしてなさそうで安心したよ」
そんなやり取りをしながら、爺さんは俺の近くまできた。
「さて、今回の成果を見せてもらおうかの」
そう言って、手を出してきので俺はバックの中からスライムゼリーの入った壷を渡した。
爺さんは、壺の中のゼリーを持ってきた小皿に少し垂らし、不純物の検査をしている。
これは、納品の時に必ずやる検査で、これで買取価格が決まるんだってさ。
「良い状態だ。不純物が無い。最高品質と言っても良いだろう」
爺さんが上機嫌で褒めてくれた。褒められるのって、大人になっても嬉しいものだね。
「これだけ良いモノだと、メートル級のスライム狩りには多少は苦労したろう」
「いや。俺が狩ったのは30cm級と50cm級ですよ」
「?!ほんとうか?。その程度の大きさなら回収の時に、泥やら砂やら不純物が入るはずだぞ」
「いやぁ。俺の装備はスライムと相性が良くって、きれいに回収ができるんすよ。あと100リットルほど在庫もありますよ。あ!あと、これも……」
そう言って、俺はスライムコアも爺さんに手渡した。
「!……こいつは、スライムコアか!すごいじゃないか。滅多に取れないお宝じゃないか。」
シゲシゲとコアを観察する爺さんがある事に気が付いた。
「なんじゃ?こいつにはキズが無いうえに、風化もしておらんぞ?どうやって回収した?」
「だから言ったじゃないすか。DELSONはスライムと相性が良いって。ゼリーを吸い取って、残ったコアを拾ったんですよ。」
「ほう……。そいつは便利な装備だ。これならスライム狩りは合格だな」
やったぁ~!名人に褒められちゃったぁ。
「じゃ。次の獲物を出してもらおうかの」
そう言われて、俺はウサギを出した。
「ウサギか。矢で一撃、当たり所も良いな。これも合格で良いじゃろう。ユウキ、よくやったな」
これも合格をいただいた。う~ん、俺ってば、やっぱ優秀なんじゃん。
「よし。こいつの解体を教えるからな。やってみろ。」
こうして、俺にとってはかなりハードなお勉強が始まった。
「血抜き」に「皮剥ぎ」「
知らんかったわぁ。小さな獲物でも肉の下処理って大変なのねぇ~。
スーパーでパック売りしてるのを買うのとは、全然違うわ。
これが「命を食べる」って事なのね。究極の「食育」だわ。
そんなこんなで、ウサギの解体も悪戦苦闘しつつも終わり。
俺はDELSONに保管している大物を思い出した。
「そうだ。爺さん、もう一匹あるんだけど……」
「ん?そうか。出してみろ」
「は~い」
そう言われ、俺は電撃猪(ライトニングボア)を出した。
「?!………………………………」
目の前に現れる5m級の角イノシシに、ポカーンとするヘイゼル爺さん。
「ユウキ……。コイツはどうした……?」
「へ?どうしたって……。狩ったに決まってるだろうに」
「お前一人で狩ったって事か?」
「そうに決まってるでしょ。誰が協力してくれるってぇ~の?しかも、俺はコイツに殺されかけたんだからね」
俺はライトニングボアをポコポコと叩きながら、狩りの時の事を細かく爺さんにはした。
「そうか……。大変だったな。これなら、もう森の奥に行っても大丈夫じゃろう。充分、合格じゃな」
おぉ~!やったぁ!耐久試験に合格できた。これで一安心だ。
「じゃが、コイツはここじゃ、解体できん。村に持って帰るぞ」
そう言うとヘイゼル爺さんはニコリと笑って村に向かって行った。
俺は慌てて、イノシシを収納すると小走りに爺さんの後を追った。
試験は上々の成績で終了できた。
はぁ~これで今夜はフカフカのベットで眠れる~。
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