12/27 これが年の瀬にやることか(あと『声の物語』を読んだ)

 不定期でやろうと思っている本エッセイだが、始まったばかりなのでしばらくは極力日刊でやる予定ではある。


 しかし、毎日毎日語るに値するネタなど特にあったりするわけでもない。ネタがないから昨日など「連載中に聴いていたBGM特集」などをする羽目になったりするわけだ。

 今日もネタもなく、こんなもん更新する暇があるなら家の掃除でもしろという心の声に苛まれだす始末。でも掃除はにがてだから逃避行動として結局PCの前に座っている。

 

 それにしても、このエッセイを始めるにあたって終わらせたエッセイの方が読まれて、回らない小説PVのカウンターを見るのは切ないものである。一つでもいいから回ってないかとついつい確認してしまうが、叩けばたたくほどビスケットが増えるポケットのようにはいかなくてPVは一向に回ってくれないのだった。


 とはいえ、うーん、まあこればっかりはねえ……どうしようもないや、で諦めるしかない。待てば海路の日和アリの心境で読者さんがお越しになるのを待つしかないのだった。

 

 星やレビューをどかっともらえるタイプの書き手ではないので、ハートやPVがちょっと増えるだけでも小躍りするような、喜びのハードルが低いヤツですのでよかったら何か読んでやってください。短編もありますので。



・本の話……

 この前から読んでいた、クリスティーナ・ダルチャー『声の物語』を読みおえたので感想を少々。

 反動的な大統領が誕生し、聖書に則ったというふれこみによる極端に男性優位主義の政策のもと、全ての女性の手首に一日百語以上喋ると強い電流がながれるしくみになっているカウンターが巻かれるようになった近未来アメリカ。ボディランゲージすら禁じられ、家庭に還れとばかりに管理・監視される、女性たちはそんな存在となる。ある日、元認知言語学者で夫と四人の子供たちとくらすジーンの下に大統領の側近たちがやってくる。事故で脳に傷を負い意味をなす言葉をしゃべれなくなった大統領の兄の治療に関する研究をする間、自分と娘のワードカウンターを外すというものだった……という、『侍女の物語』を下敷きにしたようなディストピアSFもの。

 

 現代社会を反映したような近未来社会(声高に主張する女への冷遇、どこかの国に本当にいそうな大統領や説教師など)、そこで自分の人生を思う様生きられない女性たちの不自由さ、そのせいで倍働かなくていけない男性の負担、優しいことは優しいが結局のところは女性側の不満や怒りを理解できない夫へのいら立ち、極端な思想にそまってゆく息子、言語活動を制限されていう娘への影響と将来の不安……等々、この世界での社会のイヤさはよく書かれているので読み進められるのだが、途中からヒロインの恋人が出てきたあたりでなにもかもどうでもよくなる。――いや別に、夫以外の恋人がでてきてもいいんだけど、優しいが故に場に流される夫とちがって、粋でセクシーで勇気もあっておかしいことにはおかしいと毅然と立ち向かえる勇気ある男として最初からモリモリのアゲアゲ状態で出てくるとこっちが萎えるというか……。いやいやちょっと待って? というか。この男がどれだけいい男かとか、こっち興味ないし? というか。それよりもこの世界から出ていくなり、とどまって抵抗運動に身を投じるなりどうにかしなはれや、というか。申し訳ないがなんとなくモヤモヤしながら読み進める読書となってしまった。


 一旦モヤモヤし始めるともう止まらない。

 まず、主人公と幼い娘は取引によってカウンターを外されて早々に自由に喋られるわ、艇庫運動に投じている女性もとある裏技でカウンターを外し主人公を通して読者には言いたいことを主張しているわで「女性は一日百語しか喋れない」という制約が物語に効果的に機能しているとはいいがたい状況になってるのが気にかかる。

 酷い事、痛ましいことは主人公の近辺でのみ起こり、この世界では大罪である姦淫を犯している主人公は避雷針でもつけているがごとく、運よく難を逃れることにもイライラしてくる(そこいらじゅうにカメラがしかけられた管理社会ちゃうんかい?)。


 キャリアと頭脳の結果とはいえ、ひとりだけ特権を享受しているこの主人公が「実験用のマウスに注射するのも出来ない」「霊長類の頭に穴あけるとか無理無理無理無理……」とか言って医者の資格を持っているチームメイトに全部肩代わりしてもらってるのを読まされると、もうイライラして「チンパンジーの頭に穴をあけるのは難しかろうが、マウスの注射くらいせえ!」と言いたくなるしまつ。


 ネタバレ防止のためにラストの展開はふせるけれど、私にとってはちょっと……という結末で幕を降ろし、なんというか、「『侍女の物語』に謝れ!」と言いたくなるのが最大の感想で読み終わったのが残念だった(『侍女の物語』は今年初めて読んだが、たいそう素晴らしかった)。


 とまあ、がっかりしてしまった感想を素直に書き綴ってしまったのだけれども、ディストピア小説だけあって読みだすと止まらなくなる小説ではあった……と、思う。その点はよかった。


 

 さて、今は『希望が死んだ夜に』という社会派ミステリーを読んでいます。この本が2019年最後の本になるかな? どうかな? では今日はこの辺で。

 

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