二日目 荒野から高地 木の生える場所へ

メキシコ独立戦争の要所 アラモ砦


 メリークリスマス!!


 今日はニューメキシコ州を出て、テキサス州の都市サンアントニオを目指します。

 結果から言いましょう。


 テキサス長い!! なげぇよ!!


 走行距離は633.4miles(1013km)でした。なかなか頑張ったと思いませんか? 朝の6時半ごろにモーテルを出て、朝日に向かって車を走らせました。Google先生は九時間かかるよと言っているので、覚悟の上の出発です。そして、やっとこの都市に無事たどり着いたのです。

 昨日は鹿児島から岡山まで行きましたね。今日は岡山市から仙台市まで走りました。これがアメリカでは一つの州の端から端までにすらなりません。アメリカ、恐るべし。


 昼飯も取らず、休憩もガソリン補給の一回だけで走り続けました。ガソリン補給をした時に思います。

「今、12時半か。あと240kmなら二時間くらいだな。よし、3時にはつけるはずだ」

 大先生は表示します。

「予定到着時刻は4時です」

 

 はて……?


 僕はもう一度計算しなおしましたが、走行時間は問題ありません。そして、携帯の時刻を見て、はた、と気づいたのです。


「そうか、時差で一時間押したんだ……」


 水曜どうでしょうをご存知の方はこの怖さは実感されていることでしょう。アメリカには4つのタイムゾーンが存在します。


 僕が今回旅をする場所では以下の通り、カリフォルニアが一番西、下に進むにつれて東のタイムゾーンになります。つまり、一時間ずつ時間が早くなります。カリフォルニアが昼1時であれば、フロリダは夕方4時ということです。

 ・カリフォルニア

 ・アリゾナ、ニューメキシコ(昨日泊まった所)

 ・テキサス、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ

 ・フロリダ

 今日はテキサスへ入ったので、時間が気付かぬ間に一時間進んでいた、という訳です。


 ちなみに、日本は極東と言うように、地球上の中では早く一日が明けます。日本から見ると大抵の国は過去に生きていることになりますね。


 この国内時差も行程所要時間に加えなければ……。分かってはいましたが、結構辛いな、これ……。




 二日目になると、運転途中で時々眠気が襲ってきます。11時50分ごろは腹ペコのジャガーの前に飛び出たウサギの如く襲われていました。ガスを補給出来る近くの町まであと30分(64km)。目の前には一直線に道路が伸び、周りには背の低い木々と、台形をしたごつごつした岩山ばかりが広がっています。車を止められる場所も出口も見つかりません。


 あー、眠いなぁ。

 と、目を瞬かせたその瞬間、流れたのがノラジョーンズ。


 一瞬で脳が危険信号を出します。

「やべぇ!! 寝る!!」

 

 即座に僕の右手は愛用のiPod Classicの次曲ボタンを押していました。


 ……危なかった。

 α波が作用する前に曲を変えれて良かったです。あのままノラの声を聞いていたら、僕はテキサスの道端に横たわっているアライグマのようになっていたでしょう。


 ちなみに変えた後の曲はマキシマムザホルモンのハイヤニスペイン。存分に頭を振りました。





 色々と書きたいことはあるのですが、サンアントニオのことを書きましょうか。サンアントニオと言えば、アラモ砦とリバーウォークだと同僚のアメリカ人が教えてくれました。


 アラモ砦はテキサス革命の中の戦いで使用されたという世界遺産。テキサス革命とは、かつてメキシコの一州であった現テキサス州がメキシコからの独立を掛けて戦った戦争のことです。

 この戦争の途中、アラモ砦を守った180余名の守備隊は、出典によって数はまちまちですが2,000~5,000人というメキシコ軍に対し二週間もの間、防衛線を保って、最終的に全滅しました。後にテキサス軍はメキシコ軍に対して勝利を収めるのですが、この奮闘したアラモの義勇兵は英雄として語り継がれることになるのです。


 ボスによると、この戦いを元にした映画が有名だということです。戦いの場所というには周りは都会化していて、クリスマスツリーが飾られていることもあり、血なまぐさはありませんでした。

 でも、日本のあらゆるお城も同様ですが、かつては戦いの場所となったもの。アラモは元伝道所ですが、そこで戦いがあったことは事実なのです。人が住んでいる場所で、人の血が流れていない場所、血肉が土に還っていない場所は無いのかもしれませんが、このような場所はそのようなことを思い出すのに必要ですね。


 

 全然関係ありませんが、今ハマっているアニメ(漫画)にヴィンランド・サガという中世北欧のヴァイキングを舞台にしたものがあります。卒論で中世西洋(経済)史を選んだので、文献は少し目を通しましたが、奴隷がいて、誇りを重視した村社会の生活は、今の時代の価値観から考えるとなんと無慈悲でしょうか。


 弱い者は死ぬ。強いものは死んで戦い続ける。

 そんな北欧神話を後ろ盾した世界に生れ落ちなくてよかったと思います。

 

 僕はお城や歴史的建造物が好きですが、その素晴らしい造形や美術に目を奪われていると、他の場所より血生臭さが濃い場所なんだよなぁということを忘れそうになります。歴史的価値を持つ芸術品そのものも息を呑むものですが、自分が今、奴隷として売られる立場にないことや、敵に包囲されて壊滅することがないことにも安堵しています。


 歴史が好きな人は、「今」が好きなんだと思います。

 歴史を知ることで、「今」の特別性がはっきりとした輪郭を持って浮かび上がってきますから。


 

 さて、アラモを見学した後はリバーウォークを散策しました。リバーウォークは水路沿いに並んだお洒落なレストラン街と言う感じでしょうか。クリスマス仕様にデコレーションされた雰囲気は流石。クリスマスにも関わらずレストランは開き、人々で賑わっていました。(雰囲気を動画で撮ったので、良ければインスタを覗いてみて下さい)


 その中で一人の男が歩きます。


 周りはカップルや家族で溢れる観光地。これほど一人のハードルが高いものはないと思います。狙っていた有名なレストランを回りましたが、バーカウンターでさえ、30~40分待ちでした。待ちたくなかったので、近くにあるメキシカンバーに入って、テキサスのビールを飲んで帰ってきたところです。


 アンパンマンよ……。


 ここに一人で旅行に来ている女の子はいない気がするから安心しなさい。出来もしないナンパなんて、期待もしていませんでしたが。結果として、クリスマスは一人で賑わいが溢れる観光地でビールを飲む、という体験になりました。

 皆さんも、日本に置き換えて想像してみて下さい。楽しそうですね。


 このような経験が、僕の小説のキャラクターや、風景描写を深くしているのですね。そうではないと、あんなクリスマスに唾を吐きながら、クリスマスに感謝するキャラなんて生まれませんから。良かったと思います。


 

 今年も良いクリスマスでした。

 

 皆さんのクリスマスはいかがでしたか?

 良いクリスマスであることを祈っています。


 

 改めて、メリークリスマス!!


 

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