一日目 砂漠を駆ける 比較的楽な道中

純白の砂漠 ホワイトサンズ国定公園


 こんばんは。

 

 今はアメリカ時間でクリスマスイブ。去年はサンクスギビングもハロウィーンもクリスマスも特に何もなくのんびり過ごしたので、今年は何かをしたいと思い、浮かんだのが旅行でした。

 

 アリゾナは珍しく生憎の雨模様。いつもは気温が20℃を超えてくるのですが、少し涼しい日になりました。アリゾナは砂漠の州。何を隠そうグランドキャニオンはアリゾナの国立公園だし、パワースポットで有名なセドナが近場にあります。

 避寒地として有名で、スノーバードと呼ばれる北の州のお金持ちが飛んできます。一年を通して晴れが多く、温暖(夏は猛暑)なので、人口の伸びが高く、次々と高級そうなコンドミニアムや一軒家が郊外に建てられています。


 どちらかというと日本に近いこの場所から、今日の朝6時、スノボによる全身の筋肉痛と二日酔いでフラフラする頭を抱えて、車に飛び乗りました。

 

 目指すは隣の州にある純白の砂漠

 ――White Sands National Park


 アメリカに来た時からずっと行きたいと思っていた場所。

「雪は降らなくともホワイトクリスマスにしてやろう!」

 と、純白の砂漠を堪能しようと意気込みます。


 砂漠は石膏の粒子で出来ています。石膏は水に溶けやすく、これほど大量の石膏が地上に留まっていることは非常に珍しいのです。


 時は遡って2億9千万年前。ペルム紀。この場所は海でした。その後、時は流れ、太古の海が残した石膏の厚い層は地殻変動によって山脈を形作ります。


 それらが雨に侵食されて盆地へ流れ込み、太陽の熱によって水分が蒸発、幾度もの浸食と風化によって石膏の結晶は砂状に砕かれていきます。それらの大量の白い砂が風によって運ばれて砂丘を形作っているのです。


 

 噂には聞いていましたが、実際に目のあたりにすると圧巻。


 見渡す限りの純白の砂丘。

 人の足跡が無い真っ白のキャンバスには風紋が刻まれています。


 石膏は真夏でも太陽の熱を持たず、砂丘の上り下りで発生した熱を足の裏や手のひらを通してそっと奪っていきます。片手で一匙掬い上げてみると、微細な結晶は手に張り付かず、さらさらとした感触を残して風に飛ばされました。


 僕は何も描かれていない真っ白の砂に自分の足跡をつけて歩きます。


 どうして、砂地に足跡をつけるのはあんなに楽しいのでしょうね。

 海でも、砂漠でも、自分が通ってきた足跡を見るのが好きです。


 それは「自分がここにいた」からでも「一歩ずつ登ってきたことの証拠」であるからではありません。本当の理由は全くの逆で、自分が残した足跡は今は確かにそこにあるけれども、打ち寄せる波や吹きすさぶ風によって、いつか必ず跡形もなく消え去るからなのです。


 この雄大な自然に、僕と言う人間が足跡を残したけれども、いつかはそんな存在も消えてなくなるのだな、と悠久の時の中の自分の人生の取るに足らなさを感じることが出来るような気がします。それは錯覚かもしれませんが、大多数の人間にとっても、そこにある自然にとっても僕の生が意味を持たないのだったら、もっと自由に生きていいよなぁ、と思えるのです。


 空模様は白く、時々灰色に染められていたのが残念でしたが、それでも余りあるほど綺麗な景色でした。


 トレイルの内側を通って6kmを歩きましたが、あえてトレイルコースを外れることをお勧めします。トレイルコースは人の足跡がついていますからね。それならば適当に人がいなさそうな場所に向かって歩いて行って、誰の足跡もついていない場所に自分の足跡を残すのが良いでしょう。


 風紋と自分の足跡だけが残り、風の音と自分の呼吸の音しか聞こえない。


 そんな場所で空を見上げて、さらさらのひんやりした砂の上に体を投げ出すと最高に気持ちが良いです。


 無用の存在であることをありありと感じられます。

 そんな存在でも幸せだなーと感じられていることに気付きました。



 





 さて、色々と良いように書いてきましたが、その裏にある現実もお伝えしないといけませんよね。


 本日の走行距離は501.5miles(800km超)、走行時間はぶっ続けで7時間ほど。800kmと言われてもピンとこないと思うので、日本でも同様の距離を走りたいと思います。

 スタートは九州本島最南端、鹿児島の佐多岬にしましょうか。ここから高速を使って800kmと言うと岡山市まで行けます。そう考えると結構走りましたね。朝6時半に家を出て、昼1時前に着いたので意外と時間に余裕がありました。ゆっくり2時間もトレイル出来たので満足です。


 明日はテキサス州に入り、サンアントニオという大きな街まで行く予定です。Google先生によると休憩無しで9時間半の道のりです。


 退屈というのは人類最大の敵。

 書く内容を考えることで、音楽に合わせてヘッドバンキングしたくなる欲を抑え、時々見かけるCrazyなアメリカ人からでさえもぎょっとされないようにしたいと思います。


 それでも、明日は今日以上にノリノリで音楽に乗り、何もないまっすぐに続く荒野を走っていくのでしょう。セルフむち打ちにならないよう気を付けます。



 Santa Fe Brewing Co.の美味しいBrown Nut Ale(ビール)もほどほどにしないといけませんね。


 明日も頑張ります。

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