第6話

「これがお前の『親衛隊』かよドチビ。この海ゴキブリどもをけしかけようってんなら結構頭いいぞ、お前。もう臭くて臭くて心が折れそうよ。それにしてももう少し他に居なかったのかよ。海ゴキブリ使いのヒロインなんかたぶん史上初だよ? こんなのに戦わせるのがお前のキャラだっていうんなら、もうそりゃ悪役だぞこのブスブスブスドブス」

 立て板に水の啖呵たんかを切るホシオに対して一斉に襲い掛かるフナムシの群れを覚悟したタキだったが、フナムシの動きの奇妙さに気付いた。フナムシの群れは明らかに困惑している。初めはタキとホシオの間に分厚く存在した群れが、ホシオが近づいてくるにしたがって後ろへ下がり、今やその群れはタキの後ろに隠れている。苦も無くタキの目の前に立ったホシオは、顔をくっつけんばかりに近づけ、盛大にメンチを切っている。タキは両手の平をホシオに向け、

「ごめん、ごめん、ごめんなさい。言い方を間違えました。これからは気を付けます」

 と、やっとキチンと謝ることができた。

「ちゃんと謝れるじゃないか。これからは気をつけろよ」

 と言うや否や白目をむいてタキに倒れ掛かるホシオ。

「お、重い………!!!」

 タキはのしかかってきたホシオの身体を、思い切り地面にたたきつけた。今度はもうホシオは目を覚まさなかった。

「死んでないよね? 死んじゃダメ!!」

 ホシオの身体をまたぎ、胸倉をつかんで頬を思い切りビンタするタキ。意識は戻らないが、死んではいないようだ。深く安堵のため息をつくと、ホシオの身体にまたがったまま、ドスンとへたり込む。情けなくて、疲れて、涙が出そうだ。もう陽は沈んでいた。

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