第5話

 そして今、ホシオはそんなタキに対して罵詈ばり雑言ぞうごんを浴びせ、怒りの火の玉ストレートを投げ込んできている。間もなく「親衛隊」による一斉攻撃が始まるだろう。それでは困る。もうすでに父の依頼を一つしくじってしまっている。それに加えて次のミッション――ホシオを新大阪に連行すること――までしくじった上、ホシオ君はフナムシに骨までかじられちゃいましたテヘペロではもうどうしようもない。ただでさえご神体を失って死にそうなホシオの命を守るためにもここは素直に謝って、平謝りに謝って、何とか一緒に新大阪まで来てください、とお願いするしかないのだ。

「悪かった、悪かったわよ! でもね、これ以上私に対してそういう口をきかない方が身のためよ。私の親衛隊があなたを敵だとみなせば、今この場で死ぬんだから」

 ああああああああああああああああ!!!!!!!!!! ものすごく言い間違えた!!!!!!!!!! 言いたいことは言えてるけど言い方!!!!!!! 言い方!!!!!!!

「ああ?」

 ホシオが険悪な表情のままゆっくりと立ち上がった。

「面白いじゃないか。やれるもんならやってみろよ」

 今や岩場をびっしりと埋め尽くすフナムシの群れ。タキを中心に渦を巻くフナムシの動きはさながら銀河のようである。不意に大いなる虚脱感きょだつかんに襲われたタキは、ぼんやりと今の自分とアンドロメダ瞬に共通する、思い通りにならない人間関係に対する深い悲しみへと思いを馳せるのであった。

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