第109話

*以前のお話で、ソードマンの上位職を「ソードマスター」と「騎士」としていましたが、「騎士」→「サムライ」に変更。

また92話で上位職に「聖騎士」「狂戦士」があると書いておりますが、

「聖騎士」→「騎士」に変更しております。



******************************


 卵ガチャを頑張って、全部の装備ロックを外してからジータへ。

 アーシアとルーシアには、その間、経験値が公平設定できる人たちとパーティーでレベリングをして貰う。


 ジータへとやって来た僕は、直ぐに領主の屋敷へ行った。


「どうしたんです、タックさん。祖父の墓参りに来たばかりだったのに。何かあったんですか?」

「実はその……いろいろあって預けた装備を受け取りに」


 心配そうな顔でアレスの孫──現領主のアレックス氏が言う。

 さすがに領主を務める彼に、革命軍の話は出来ない。彼が信用できないのではなく、巻き込みたくないから。

 話せばきっと協力を申し出てくるんじゃないかって、そっちの方が心配だった。


「装備を? 全部ですか?」

「う、うん。全部。ちょ、ちょっと知り合った冒険者に貸し出ししようと思いまして。もちろん前金制で」

「……持ち逃げされませんか?」

「だ、大丈夫です」


 なかなか厳しいいい訳だなぁ。

 じっと僕を見つめるアレックス氏。暫くそうして、ため息を吐いてから小さく頷いた。


「では祖父の残した物も、どうぞ持って行ってください」

「え、でも大会とかは?」

「いくつか残しておきます。どうせ転移者しかのだから、一本でもあればいいんですよ。どの職業でも装備出来るダガーなんていいでしょうね」


 無駄に激レアのダガーを残すという。

 激レアでも攻撃力はそれほど高くない。ただめちゃくちゃ装飾が凝ってて、金銭的な意味では相当なものだと言う。


「結構数がありますが、持てますか?」

「ギリギリなんとか」


 僕が持っていたお古の装備は全部置いて来た。趣味で持っていた物も。

 他にも比較的数の少ない素材系もあっちで預かって貰っている。

 アイテムは十分確保したから大丈夫!


 装備可能職業順にアイテムボックスへ入れよう。取り出す時に分かりやすいし。


「よし、これでオッケーっと」

「タックさん」

「アレックス氏、ありがとうございます。いろいろ終わったら返しに来ますので」

「タックさん。私は祖父の意思を継いでいるつもりです。何かあれば必ずお助けします。それだけは忘れないでください」


 ……気づいてる……のかな。

 いや、革命軍の存在はまだ世間には知られていないと思う。

 でも──


「ありがとうございます。ジータに危機が迫ったら、僕も必ず助けに来ます。必ず」


 アレックス氏と握手を交わし、それからアレスの墓前にもそれを誓った。

 

 また来るよアレス。

 その時は僕らプレイヤーが目指していた『LOST Online』になっていることを祈っててくれ。






 僕がインスタンスダンジョンに戻って来たのは、出発してから二週間弱のこと。

 直ぐに合流してレベル上げの再開。辛うじて経験値の公平が保たれているけど、それももう終わる。

 戻って来てから五日後、二人がダンジョン内で急に「あっ」と言ってアーシアが剣を落とした。


「どうした?」

「な、なんだか……剣が急に重くなった気がして」

「ワタシはあんまり変わらないけど、なんとなく今までと違うって感じがするわ」

「もしかして──」


 慌ててインターフェースで確認すると、アーシアは『サムライ』に、ルーシアは『ハンター』になっていた。

 予想外なのはアーシアだな。


「アーシア、サムライになっていたよ」

「え、サムライ……ですの?」

「だから剣が重くなったのかもしれない。サムライだと刀しか装備出来ないからね」


 あとはレベルの問題もあるんだろうな。二人のレベルは今、1に戻っているし。


「レベルがリセットされたから、ここのモンスターは危険だ。外に出よう」


 今のインスタンスダンジョンはレベル98±が適正に設定されているし、レベル1の二人だと即死コースだ。

 ステータスだってリセ──いや、異世界人仕様でステータスがリセットされてないんだ!


 えぇ、ずっと加算されるのステータス?

 それってずるくなーい?

 まぁ……僕も異世界仕様+ゲーム仕様で以前よりステータスの上昇が増えていっているけどさ。


「……試しにあいつだけ、倒してみようか?」


 ダンジョンの通路の奥から、巡回タイプのモンスターがやって来た。

 ルーシアに弓で射って貰って、ダメージを全然当てられそうになかったら僕がすぐに援護する。

 まぁ危険はないだろう。


「じゃあやるわよ」

「ん」


 シュッと飛んだ矢は真っ直ぐモンスターの頭に突き刺さり、敵はよろめいた。

 ギュイーンっとHPバーが下がる。


 あれ?

 前と変わらない……いや、少しダメージ量下がったかも?

 そう。かも、なレベルで下がっている。


 結局、奴がこっちに到着する前にルーシアひとりで倒してしまった。


 ……レ、レベルどうなった?

 インターフェースで確認する。


 アーシア、レベル1。

 ルーシア、レベル5。

 僕、レベル95。


 あぁー、うん。獲得経験値の公平設定だけ、しっかり切れてやんの。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る