第107話

 町の地下アジトにいるのは三十人ほど。

 彼ら全員をインターフェースを開いて、そのステータスを確認した。


「へぇ、全員ステータスに合った職業になってるんだ。これなら職業変更チケットはいらないな」

「まぁここにいるのは冒険者ばっかりだからな。自分に合った職業なんざ、自分でちゃんと分かってるって」


 ここのリーダーであるスキンヘッドのケビンが、そう言って笑った。

 だけどここではなく、本拠地には職業矯正中のメンバーが結構いるらしい。


「職業矯正?」

「あぁ、鑑定師の中にはな、強さを数字として見れる奴もいるんだ。それでよ、魔力が高い奴は、なんとか魔術師に矯正してーんだよ」

「ほほぉ」


 鑑定スキルも、使う人によって変わるもんなんだな。


「ブレッド。僕をその本拠地に連れて行ってくれないか? あ、あとこれを──」


 ケビンに『超祝福の巻物』を渡す。

 一時間だけ、獲得経験値が二倍になる課金チケットだ。五枚で六百円。これを六十万円分、枚数にして五千枚を渡した。

 使い方もちゃんと説明して。


「それとここから北西の山にダンジョンがあるよ。効率のいいダンジョンで、パーティー単位で別空間みたいになってるんだ。そこでこのチケットを使ってレベル上げをするといい」

「北西? なんか昔、その辺にへんてこな洞窟があるってのは聞いたことがある。が、今はそんなもの、存在してねえはずだぜ」

「入口を大岩で塞がれていたんだ。僕がそれを破壊したから、今は入れるようになってるよ」

「ほぉ。なら腕試しに行ってみるか」


 ダンジョンに入ってすぐのアナウンスの事、石板に手を触れた者が最大八人までパーティーとして認識されること。

 それらを説明してから、ついでに手持ちの課金ゴミポーションシリーズを全部押し付けた。


「あ、そうだ。今度アレスの所に行って、預けた課金武具とかも持ってくるかな」


 誰も使わないで埃被らせてるより断然いい。


「じゃあブレッド。本部に連れて行ってよ」

「了解☆ミ」


 ぱちんっとウィンクをするブレッド。その視線の先から僕をすっと逃げた。






 革命軍本部に到着したのは十日後。結構遠いな。

 廃坑を利用したそこは、奥にダンジョンへと通じる穴もあって訓練に持ってこいの場所だった。

 そこの食堂で、職業矯正が出来てない人たちを集めて貰う。


「矯正って出来るもんなんだね」

「ですが時間が掛ります。それまで戦士をしてやってきた者が、実は魔力が高かったので魔術師にと言っても、魔法の使い方を知らないのですから」

「あぁ、そうか」


 ゲームと違ってこの世界の人は、魔力があれば魔法が使えるという訳じゃない。

 ちゃんと学ばなきゃならないもんな。

 でも魔法を使える人がそもそも多くはない。貴重な高魔力持ちは、魔術師に転職して貰いたいだろう。


「じゃあ、魔術師が二十五人で神官が十人だね」

「あぁ。しかし本当に紙を破るだけで矯正が完了するのかい?」

「うん。じゃあ君たちはこっち、そっちの人たちはこれ。紙を破ってみて」


 首を傾げる革命軍メンバー。それでもみんながびりびりとチケットを破る。

 インターフェースを開いて確認っと。

 よし、全員転職完了!


 彼らの中に鑑定スキル持ちがいて確認すると、まぁ当然驚くよね。


「転職仕立てだから、全員レベル1だよ。サクっとレベル上げをしなくちゃね」


 冒険者カードを使って、魔術師五人に対して神官二人というなかなかな勇者パーティーを作って貰う。

 基本は彼らに攻撃をさせ、もしもの時は高レベルが助けに入る──という、パワーレベリングが行われた。


 けど、適正レベルなら魔術師が五人もいるとむしろ火力過多だ。

 経験値UPチケットを使い、一週間もすると全員のレベルが40を超えた。


「この一週間で、俺たちめちゃくちゃ強くなったよな」

「過信しないでね。いきなり強くなると、だいたい過信しすぎてコロっと死ぬんだ」


 そうして地雷扱いされるのがゲームだけど、この世界の住人は地雷扱いされる前にあの世行だ。

 これから暫く、レベルの近い前衛の仲間と経験を積んで貰わなきゃな。

 その為にも、


「三カ月はチケットなしで頑張って貰おうと思うんだけど、どうかな?」

「そうだな。ボクもそれがいいと思う。今すぐ帝国に攻め入る訳じゃない。地盤を固めるのが、今やるべきことだからね」

「うん。戦い慣れして来たら、また一気にレベリングをしよう」


 そして元々高レベルの人には、上級職になって貰おう。新職のレベルもある程度上げておいた方がいいだろうし。


「ということで、アーシアとルーシアのレベル上げ最終段階に進もうか」


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