第100話
二人のレベルが93になる前に、僕のレベルが88になった。
といってもすぐに二人のレベルは93になって──二日後には94に。僕のレベルは88のままだ。
「二人のレベルが95になる前に、僕のレベルが89にならなければ……経験値の公平設定が切れるなぁ」
「えぇーっ……って、それってどうなるの?」
「んっとね、経験値が公平になっていれば、僕ひとりが倒したモンスターの経験値も、二人に分けられるんだ」
100の経験値はそれぞれ33ずつ。端数は与えたダメージが最も多い者にという具合に。
「そんなことになっていたですの」
「じゃあ、アタシたちが転職したら……タックとはもうパーティーが組めない?」
「いや、組めるけれど、公平には出来ないってことかな」
そうだ。転職後のことも考えなきゃな。
まぁしばらくは二人だけでパーティーを組んで貰っ……
うあぁぁー、そうだ。システムを開けない二人には、パーティーの結成も出来ないんだった。
くそぉう。どうしようか。
「転職後は二人でパーティーを組んで貰って、僕が後ろから支援しようと思っていたんだけどなぁ」
「出来ないんですの?」
「うん……そもそもパーティーというのが、ゲームシステムによるものだからね」
「じゃあブレッドたちはどうやってパーティーを組んでいたのかしら?」
ブレッド?
そういえばアリアとレベルが近かったな。
もしかして……ラノベであるあるの、冒険者ギルドにそういう機能があったり?
「二人は冒険者ギルドのこととか、詳しくは──ない、よね?」
「はいですの。ギルドの存在は知っているですし、どういう所かは知ってるですが」
「ギルドがどうしたの?」
「うん。もしかしてギルドでパーティーの結成が出来るのかなーと思って」
ギルドの依頼も受けないと、冒険者の資格のはく奪もあったんだっけ。
とりあえず公平が組めなくなるまでインスタンスダンジョンでレベル上げして、公平出来なくなったらギルドに行ってみるかなぁ。
結局、二人のレベルが96になったところで、僕らのパーティー公平が切れた。
二人だけでインスタンスダンジョンに入らせるのは正直心配だし、あとは高レベルのモンスターがいるフィールドか、普通のダンジョンだな。
「一度町に行って、ギルドでパーティーのことを調べておこう。もしパーティーが組めなくても、モンスターの情報が欲しいし」
「分かったですの」
「久しぶりにお風呂に入りた~い」
「私もですの~」
キャンピングカーだとシャワーはあるけど、お風呂はないもんなぁ。
うん、僕もゆっくり風呂に浸かりたい。
山を下り、村をそのままスルーしてライド獣を走らせる。
数日後には大きな町にたどり着いた。
ゲームでは実装されていなかった町、ルイーザだ。
インスタンスダンジョンを目指すとき、途中で立ち寄った町だ。
たこ焼き、綿菓子、りんご飴の売り上げもなかなか良かった。また屋台を出すかなぁ。
「じゃあ先に冒険者ギルドに行こうか。それから風呂付の宿を探そう」
「はいですの」
ギルドに行って、まずは受付カウンターで職員に確認してみる。
「あの、僕ら冒険者登録をしているんですが……パーティーをここで登録したりとかって、出来るんですか?」
「はい。冒険者カードをお持ちでしたら」
「カード?」
そんなものは貰っていない。登録を証明する羊皮紙なら持っているけれど。
「冒険者カードは、ギルドポイントが一定量になりますと発行されるものです」
「なるほど。そのカードがあればパーティーが組め……組むとメリットってあるんですか?」
「はい。戦闘での経験を共有できます。女神によって作りだされた金属を通し、お互い成長できるようになっている……ということなのですが、実際はお試しいただくのが分かりやすいのですが……」
カードは持っているかと尋ねられ、僕らは首を振るしかなかった。
だけど聞く限り、ゲームのパーティーと同じ機能をしていそうだ。
「あの、ポイントの高い仕事はありますか?」
「ランクをお聞かせください」
おぅふ。僕たち最低ランクです。
「まぁ最低ランクですか……しかしランクがイコール強さではありません。失礼ですが鑑定させて頂いてもよろしいですか?」
「え、鑑定で強さが分かるんですか?」
まさかレベルが見えるとか!?
「はい。ぼんやりとですが、数字が見えるのです。その数字が高ければ高いほど、強い証拠だとされています」
「す、数字……他には見えないんですか?」
「えぇ、数字だけです。鑑定してもよろしいですか?」
レベルだけが見えるんだろうな。
女神がこの世界の住人に与えた力なんだろう。
「えぇ、どうぞ、鑑定してください」
「では──」
思ったほど簡単には鑑定できないようで、一分近くじぃーっと見つめられた。
凄い。その間、瞬き一つしてない。
「なっ!?」
突然声を上げて椅子から立ち上がり、その上驚愕した表情を浮かべる職員。
僕を、それからアーシアとルーシアを見つめる。
特にアーシアたちをじろじろ見ていた。
あ、これ……マズい。
この職員、今誰かに目配せしたぞっ。
「アーシア、ルーシア!」
「え、なに?」
「どうしたですの?」
くそっ。背後を取られた。
「おい、どういうことなんだ?」
「どう、とは?」
しらばっくれる職員。だけど今の言葉で、彼女の顔は青ざめた。
「後ろの連中は、なんだってことだ」
「ぅ……そ、それは──」
僕たちを囲うように、十人ほどの冒険者が立っていた。
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異世界転生の新作出しております。
こちらは第一部完が出来るところまで執筆しておりますので
そこまでは毎日更新でいきます。
どうぞ、そちらもよろしくお願いいたします。
『錬金BOX』で生産チート+付与無双~無能と罵られ侯爵家を追放されましたが、なんでも錬成できちゃう箱のおかげで勝ち組人生を送れそうです~
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