第96話
「ここ、三階で終わりなのね」
「ガーディアン強かったですのぉ。でもおかげでレベル79になりましたぁ」
「僕も77に上がったよ。さて、ステータス上げなきゃ」
「タックさんはステータスを自由に弄れて、羨ましいですの」
異世界仕様で勝手に上がるようにもなったし、夢が広がリング。
なんとなくだけど、異世界仕様の場合は行動によって上がるステータスが決定するのかもしれない。
魔法を使っているから魔力と詠唱は確実に上がる。肉体は……ずっと歩いているから?
敏捷は位置取りのために走ることはあるけれど。
こんな簡単に上がるなら、この世界は超人だらけになりそうではあるけれど。
魔力も詠唱も放っておいても上がるなら──。
「回避賢者でいくぜー!!」
インスタンスダンジョンで上がったレベル4つ分のポイント12を、全部回避に突っ込んだ!
ふっふっふ。後悔はしていない。
「よし、じゃあ一度パーティーを崩すよ」
「え? どうしてそんなことを」
「インスタンスダンジョン内でパーティーを崩すと、強制的にここから追い出されるんだ。そしてリセットされる」
リセットされて、モンスターがまた復活するのだ。
まぁ強制退場されなければアイテムを使えばいい。
パーティーをシステムで解散させると、10秒後にダンジョンを脱出しますというメッセージが浮かんだ。
10秒後、僕らは夜空の下に立っていた。
80±のインスタンスダンジョンを一周するのに、ほぼ一日掛かった。
だけどモンスターとの戦闘回数が多いのもあって、魔法都市のダンジョンとも比べ物にならない速度で上がっていく。
翌日もう一度80±に入ってから、次に85±に。
「三階まで来たけど、まだ下がある……どうする? もう夜だけど」
「ここにキャンピングカーは出せますの?」
「やってみる。たぶんダメだと思うけど」
ダメだった。
野宿は出来るけれど……
「一度外に出ましょう。1階から3階でも十分レベル上げは出来てるんでしょ?」
「うん。敵のレベルも上がっているからね。その辺は大丈夫だよ」
一度パーティーを解散して地上へと戻って、キャンピングカーで休むことにした。
「この分だとレベルのカンストも近いかもしれない。転職のことも考えないとね」
「転職……ですの?」
「そ。上位職にね」
そういえば、この世界ではどうやって転職をするんだろうか。
転生は神に祈ると言っていたけれど。
白タイツマンのブレッドはソードマンだったし、上位職は確実に存在する。
こんなことなら転職方法とか、聞いておけばよかったなぁ。
あぁ、なんとなく彼の『おぉ、心の友よ』という声を思い出してしまった。
で、悪寒が走る。
ブルブル。
とにかく探さなきゃなぁ。転職方法。
「上位職……アタシたちがそんな凄そうな職業になれるのかしら」
「ですの。今の私たちはタックさんがいなければ、こんなダンジョンではすぐに……」
「いや、2人も十分強いじゃないか。アーシアがいなければモンスターをまとめられないし、僕が取りこぼしたのを的確に仕留めてくれるルーシアも」
それでも二人は納得しない。
もっと強くなりたい──と。
僕は異世界仕様を手に入れられたけど、その逆はないのかなぁ。
いや、ゲームをプレイしていない彼女らには無理か。
とにかく、新しいスキルを習得できればなぁ。
彼女らのスキルは全然増えないから、ステータスの上昇と武器の性能に頼るしかない。
夕食のあと、休んでいると二人が車の外へそっと出ていくのに気づいた。
カーテンの隙間からこっそり外を見ると、アーシアは剣を素振りを、ルーシアは弓を引いて的撃ちをしていた。
二人が頑張ろうとしているんだ、僕は何も言わず見守ろう。
特訓が終われば小腹も空くだろうし、せめて二人のために夜食を用意するかな。
公式ショップを開いて、料理メニューのページを頭を抱えながら見る。
女性に出す夜食でラーメンとか……ダメかなぁ?
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