第97話
ショートケーキでいいかなぁ。
──いやぁ、ダメだろう。
そんな懐かしい声が聞こえた気がした。
「大変よタック!」
夜食用にとショートケーキをポチろうとしたところで、ルーシアとアーシアが駆け込んで来た。
何故かアーシアの顔は涙でぐしょぐしょになっている。
「アーシア! どうしたんだ、何かあったの?」
「タックさん、タックさんっ。アレスさんが……アレスさんが死んじゃったですのぉっ」
え?
アレスが……え?
「あの、え?」
混乱する僕に、ルーシアが説明した。
「アーシアの剣が急に光ったの。そしたらアーシアったら動かなくなって」
でもそれはほんのわずかな時間だったらしい。まるで魔法都市ダンジョン最下層で、僕が女神と対面した時のように。
「わた、私、光の中でアレスさんと、ひっく、会っていたですの。そこで、アレスさんに……彼が習得する全てのスキルを、伝授、ひくっ、して頂きましたの。そして……」
「そし、て?」
アーシアは涙ぐみながら必死に話してくれた。
「すべてを、伝授し終えると、アレスさん、「タックによろしく」と言って……。うぅ、再会できて良かった。さ、先に、みんなの所へ──」
「アタシはアレスさんを見てないけど、でもアレスさんの気配は感じたわ。優しい光がアーシアの傍に寄り添ってて……だからアーシアの話は本当なのよっ」
アレスが……逝った?
さっきのダメだしの声は、やっぱりアレスだったのか。
──そういう訳だ。お前はゆっくり来いよ。
優しい光……か。それは今僕が見ている、これのことなのかな。
ふぅっと目の前を横切って、そのまま空へと昇る。迷うことなく、一気に。
「タックさんっ」
「タック!?」
「うん、分かってるよ。最後の挨拶に来てくれたのさ」
まだ実感がないからだろうけど、不思議と悲しいという気持ちにはならなかった。
きっと、再会した時にアレスが、意外と幸せそうだったからかな。
翌日、僕らはインスタンスダンジョンへ潜ることを中止し、ジータの町へと向かった。
ライド獣を使って全力で走り、四日後にはジータへ到着。
領主の屋敷へ到着すると、アレスの葬儀は二日前に終わったところだった。
「そうですか、祖父がタックさんに最後のお別れを……」
「はい。アーシアは彼からスキルを全て受け継いだとか言っていました」
アレスの孫、現領主と二人で話す。
「祖父は穏やかに逝きました」
「そうですか。苦しまずに逝けるなら、それが一番幸せですよね。ずいぶんと長生きもしたんだし」
「はは、そうですね。意識があるうちに、同じことを言っていましたよ」
その話を聞いてほっとした。アレスは本当に幸せなうちに逝けたのだから。
「あ、そうだ。こんな時に聞くのもアレなんですが……。この世界では上位職への転職って、どんな風にやるのかご存じですか?」
「上位職ですか……そもそもステータスを見ることが出来ませんからねぇ、この世界の住人は」
「ご領主はどうなんです? アレスの血が流れているし──」
「いえ、父ですら見ることは出来ません。純粋な地球人である祖父やあなたのような転移者だけなのでしょう」
「そうですか……」
じゃあどうやってブレッドは転職をしたのか。
転生は神に祈ると言っていたけど……やっぱり女神頼みなのかな。
領主と話をした後、アーシアたちを連れてアレスの墓参りをした。
アーシアは何度もお礼を言って、両手で抱えるほどの花を手向けていた。
「あぁあ。アタシもスキルの伝授、して欲しかったなぁ」
「あらルーシア。あなたも剣士に戻るの?」
「うぐっ。や、やーよ。遠距離のほうが得意だもの」
「はは。じゃあバラモンの弓にお願いでもしてみたら?」
バラモンの幽霊が出てきて、伝授してくれるかも。
なんて冗談で話したら、ルーシアが真剣な目で弓にお願いをしていた。
ジータの町の教会にやってきて、女神に祈りを捧げる。
というかお願いする。
どうやったらこの世界の住人を上級職に転職させられるのか、教えてください!
──と。
暫くうんうん祈っていたら、返事が返って来た。
『レベルをカンストさせれば、自然と転職します。ただゲームと違って転職先の選択は出来ません』
『それまでの経験から相性のいい職業に就くことになります』
それっきり女神の声は聞こえなくなった。
心の中で「ありがとうございます」とお礼を言い、それから二人にこのことを伝えた。
「じゃあダンジョンへ行くですの! アレスさんから教えて貰ったこのスキルを、早く使いこなせるようになりたいです」
「いいなぁ。スキルがたくさん増えて。バラモンさん、出てきてくれないかしら」
はは。そんなこと言ったら、本当に化けて出てくるかもしれないよ。
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ほ・・・星・・・ほ・・・
(´・ω・`).;:…し(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..
ありがとうございます!(`・ω・´)シャキーン
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