第88話
「接近!」
僕の合図でルーシアと、そして僕自身がボワンドに接近する。
それは魔導士の怨霊が頭上でぐるぐる回転し始めた合図だ。
この間ボワンドは硬直状態に入るけれど、攻撃して奴の即死攻撃のキャンセルが出来ないだけじゃなく、無敵状態で一切の攻撃を受け付けなくなる。
妙なところでゲーム仕様なんだよなぁ。
だけどもう一つの、頭を掻きむしって走り出す攻撃はキャンセル可能。
頭を掻きむしっているタイミングはダメだ。走り始めて誰かに触れる前の間ならキャンセル出来る。
聖属性の盾を構え、じっとしているだけでいい。
『ジッケンジッケンジッケンジッケン!』
「その攻撃は見切っているですの!」
ボワンドの前に立ちはだかるアーシアが盾を構え仁王立ち。
頭を掻きむしりだしたボワンドをじっと見つめ、さぁ走ったぞ! というタイミングで盾をぶつける。
『イギャアアァァァッ』
「たぁっ!」
後ずさりして悲鳴を上げるボワンドに、容赦なく彼女は追撃する。
「ダブルアロー!」
「"ターン・アンデッド"」
間髪入れず僕らも攻撃を加える。
僕がゾンビアタックをしていた時と違い、聖属性攻撃の担い手が二人加わって奴のHPはゴリゴリ削られていった。
そのHPバーが残り5%ぐらいになった頃。
ボワンドが大きく息を吸うようなモーションに入る。
今までにない動作……即死攻撃!?
『フジョウフジョウフジョウ!!』
「ふじょう?」
叫ぶと同時にボワンドが紫色の息を吐きかける。それは霧となって周囲に広がり、そして──
【
ものまねが出来る!?
発動だ、発動!!
だけどこのスキル──
「か、体が……し、痺れ……るです、の」
「タ、タック。目が、目が見えないっ」
「状態異常だ!」
僕は毒に犯され、HPが勢いよく減っていく。
「"慈愛"!」
グリード戦でも使った慈愛の指輪の効果。
状態異常を回復するのと同時に、HPの持続回復も付く優れもの。
ガチャ産指輪の中では当たり装備になる。
と言っても、状態異常攻撃をしてくる敵がいなければ、使う機会なんてない品物なんだけどね。
「あともうひと踏ん張りだっ。頑張ろう!」
「はいっ」
「もちろんよ!」
慈愛の指輪の効果で状態異常の回復した僕たちは、一切手加減することなく──
『ァァァァアアアアアアアアアアアアッ』
ボワンドを倒すことが出来た。
「なのになんで巻き込まれたあんたらは残っているんだよ」
『ようやく奴の死に目を見れて満足はしているけれど、まだ未練が残っているのじゃ』
ボワンドの魔法の暴走に巻き込まれて死んだ魔導師たち。その一部がボワンドから離れて、この世に留まっている。
『さっきはすまんのう。奴と同化している限り、意思を奪われただの怨念と化しておったのじゃ』
『見ればそなたは魔導師か? いや、神聖魔法も使っておったな。賢者……か?』
「僕は……元魔導師の今はエターナルノービスです。賢者になりたかったんですけどね」
転生可能一覧に賢者は無かった。だから違う系統の魔法職のレベルをカンストさせようと思ったのだけれども。
地震の揺れで誤ってエタノビをクリックしてしまったのは……今は忘れよう。
「魔法都市の住民なら、賢者への転職方法をご存じですか?」
尋ねてみると、ボワンドよりは紳士的な風格の幽霊たちは頷いた。
デキル幽霊だ!
『賢者とは、異なる魔法を極めし者のこと』
『そなたにはその資格があるように思えるが?』
資格……神聖魔法を使っていたってことだろうか?
でも戦歌はものまねスキルだし、慈愛は装備効果だ。装備効果までカウントしてくれるって、どんなに優しい世界なんだ。
「賢者への転職も、神に祈るのですか?」
その問いに幽霊はまたもや首を縦に振る。
『神殿はある。既に朽ち果てた神殿だが、わしらもそこへ向かいたいのだ』
『連れて行って欲しい。わしらはコレから離れることが出来ぬ』
「これ……杖!?」
二体の幽霊の
こ……これって……。
「レジェンド級の杖だ!」
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新作始めました。
Let's『錬成』!=初めてのVRMMOで不遇職『錬金術師』やってます♪=
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895079246
VRMMOを題材としたプレイ日記系のお話です。
女の子が主人公の、ほのぼの系・・・だろうか??
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