第83話

 下層へと進みながら、時々キャンピングカーを通路に出して調理。

 車のヘッドライトやサーチライトでモンスターを寄せ付けない効果は、ダンジョンでも健在だった。

 しかもキャンピングカーとそう変わらない通路なら、前後にライトを向けるだけでいい。


 階層ごとの休憩所でたこ焼きや綿菓子、りんご飴を売って、更に地下を目指す。


「どうせなら最下層まで行ってみたいな」


 ダンジョンに来たからには、ボスを倒してレジェンド装備をゲットしたい!

 いや、異世界のボスモンスターにも、アイテムドロップってあるのだろうか。

 素材は解体することで手に入れていたし、峠の村で手に入れた武具は山賊が奪って溜め込んでいた物だ。


 出ない……のかなぁ。

 レアやレジェンドを落とさないボスに、ボスとしての価値なんてない!

 それを確かめるためにも、最下層に行ってみたいもんだ。


「八階まで下りてきたけれど、ここのモンスターの強さは?」

「ここはだいたいレベル40だね。レベルだけで見れば適正ではあるんだけど」

「そうですの? なんだか物足りない気がするですが」


 そりゃー全身レジェンド装備に身を包んでたら、そうなるよねー。

 でもいい機会だと思う。

 この大陸の北側はモンスターのレベルも高いというし、だったらここでレベルを上げておきたい。

 そう話すと二人も快く承諾してくれた。


「もちろん、アタシはもっともっと強くなりたいもの」

「そうですの。その機会があるなら、是非そうしたいですの」

「よし。じゃあ経験値アップチケットを使って、頑張ってみよう!」


 この先の階には冒険者も少ない。今作り置きする分を最後に、これからは僕らも冒険者として頑張ろう。






 三日かけて僕らのレベルは10上がった。階層はまだ十五階、半分だ。


「十五階に下りて、他の冒険者を見たかい?」

「いいえ、見ていないですの」

「ここまで下りてくると、普通に考えて食料の問題でしょうね」

「保存食を大量に抱えて、潜れないもんね。アイテムボックスでもあれば別だろうけど」


 異世界でのダンジョン攻略には、アイテムボックスが必須か。

 十四階は階段を下りてすぐの所に、休憩所のようなものがあった。

 一時間ぐらい十五階を歩いているけれど、それらしい場所は見当たらない。休憩所を見つける前に十六階への階段を発見してしまった。


「下に進むにつれ、階層が狭くなってきているような?」

「そういえば。階段から次の階段まで、一時間ぐらいで見つけたわね」

「それだと三十階まで到着するのも、早くなりそうですの」


 次の十六階では、出てくるモンスターのレベルは56と統一されていた。

 僕のレベルが52で、アーシアとルーシアは51だ。だんだんと差が縮まっているけれど、転生職と下位職の違いかなぁ。

 もしそうなら……二人にはこのままレベルを上げて貰って、上位職に転職して貰った方がいいのかもしれないな。

 とはいえ、レベルカンストまでは流石に遠い。それに転職すればレベルはリセットされる。

 そうなったらステータスも……。


 いや、ステータスはどうなんだろう?

 二人のステータスは僕のようにレベルアップで割り振ったりはしない。自動的に上昇しているんだ。

 もしかしてリセット……されないんだろうか。


 次の十七階もモンスターのレベルは57と固定。

 十六階から下はモンスターのレベルも一つずつ下がっていくのか。

 経験値UPチケットを使うことで、僕らは一階進間にレベルは二つ上がっていく。格上が相手だから、元々の経験値も高いからかな。

 それも地下二十階まで下りると、モンスターのレベルは60、僕らのレベルも60と追いついてしまった。


「こうなるとレベルの上りは遅くなるかもなぁ」

「そういうものなの?」

「うん。それでもチケットを使っているから、まだマシだよ」


 数字が見えている分、僕だけがそれを実感できるのかもしれない。

 ただ問題はそれだけじゃなく……。


「ここまで八日かけて下りてきたけど、二人は大丈夫かい?」


 食事もできているし、シャワーだって浴びれている。睡眠もとれているけれど……中にいる間は太陽を見ていない。

 疲れが溜まってきていないか心配だ。


 ダンジョンから脱出するのは簡単で、課金アイテムにそれを可能にするアイテムがある。

 もちろん、もう一度ここまで戻って来るのは大変だけど、道が分かっているしレベルも上がったから道中の移動速度は上がるはず。


「一度地上に戻って、出直すかい?」


 出直した場合の事も話すと、二人は顔を見合わせ少し考えてから頷いた。

 

「よし。じゃあ地上で何日かゆっくり休もう」


 課金ショップを開くことなく、アイテムボックスの消耗品タブから『ダンジョンリターン』チケットを取り出して──破いた。


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