5章
第79話
「"ディフェンス・シールド"!」
アレスのお古である、レベル40装備のレジェント盾を構え、ものまねしたスキルを使用。
防御力を一定時間上げると同時に、一定ダメージを無効にする効果がある。
アレスはもちろんスキルレベルを10取っていたけれど、ものまねはスキルレベルが10であってもマネできるスキルレベルは9まで。
だから必然的にディフェンス・シールドもレベル9だ。それでも紙装甲だった僕から見れば、段違いの防御力だ。
このスキルは防御力をパーセントで増加ではない。
防御力の数値に直接加算できるものだ。
「ゲームと違ってこっちじゃ、ダメージエフェクトが出ないから何発防げるか正確には分からないんだよなぁ」
「この辺りのモンスターだと、八回跳ね返してるわね」
「私もそのスキル欲しいですのぉ」
ジータでの結婚式を終え、昼過ぎに町を出た。
もう一泊していけとアレスは言ったけど、あれを受け入れていたらずるずると居座ってしまいそうだったんだよね。
別れを惜しんで町を出てから五日。
ジータから西の山脈に沿って南下するコースを進んでいる。
山の中腹から上はレベル50以上のモンスターが徘徊する地域。
だけど下の方はレベル40前後のモンスターの生息域で、レベル上げにはちょうど良かった。
この『タック』ではずっと盾を装備していない。ゲームの時からだ。
やられる前に殺る。サーチアンドデストロイが僕の基本スタイルだった。
もちろんソロではの話。
パーティーの時は盾役のアレスからヘイトを奪わないよう、ちゃんと火力の調節はしていたさ。
まぁそんな訳で、盾を使用に慣れておこうと思ってこっちのルートに来たんだけども……。
さすがレジェンド装備だよなぁ。
適正レベルのモンスターの攻撃を八発は完全に防いでる。
ディフェンス・シールド効果は装備込みの防御力依存だ。
防御力から差し引かれたダメージが、スキルで防げる総ダメージ量に達すると『無効』効果が消える。
ゲームだったらダメージエフェクトが出るから、計算できるんだけどなぁ。
それが出来ないから検証するしかない。
といっても、それだって敵の強さ次第で変わるっていうね。
レベル40前後のモンスターだと、だいたい八回くらいかな。
「ねぇタック。この先に小さな町があるみたいだけど、どうする?」
ルーシアが地図を見ながらそう話す。
少しだけ西に行くと街道があって、南下すると東西に分かれる分岐点がある。そこに町があるのだ。
「ジータからそれほど遠くは無いけれど、移動販売をどんな風に段取りするかとか練習もしておきたいね」
「そうですね。小さな町でしたら、大行列になることも……な、ないと思うますの」
「そうかしら? 物珍しさにいっぱい来るんじゃない? ふふ、楽しみだわぁ」
ルーシアはやる気満々なようだ。
たこ焼きをくるりとひっくり返す技は、屋台のおっちゃんも凄く褒めてくれていたし、嬉しかったんだろうな。
ふ……。
僕も華麗なりんご飴塗り塗りも火を噴くぜ!
焦がさないようにしなきゃな……。
その日は早めに野宿する場所を探して、明るいうちにキャンピングカーを用意。
出したのは二台。
寝るため用と、移動販売用の奴だ。
「セッティングを決めよう」
「「は~い」」
たこ焼きとりんご飴は車内で作る。その為にオプションでカセットコンロをいくつか追加した。
対面ソファーは折りたたんで、ジータの町で特注してもらったカウンターテーブルを備え付ける。出来上がったたこ焼きをここに並べていくためにだ。
綿菓子は車の外だ。目で見て楽しめるから、客引きにもなるだろう。
アウトドア用のテーブルの上にカセットコンロを起き、ハンドル式の綿あめ器を乗せて──。
「出来上がったものはこれに差しておこう」
「粘土ですの?」
「うん。製造に使うアイテムなんだけど、これならこねれば何度でも使えるしね」
建築関係で使う素材なんだけど、棒をぶすっと差して引き抜いても、こねこねすれば何度でも使える。
あーしてこーして。それぞれの配置を決めたら、次は販売方法だ。
「アイテムボックスがあるから、ある程度は作り置きしておいたほうがいいと思うんだ」
「そうね。焼くのが間に合わなくなるかもしれないものね」
「うん。それに三人がずっと何かを作っていたら、商品の受け渡しをいったい誰がするんだってことにもなるし」
「味を広めるのは目的ですもの、お客さんに販売できないのでは本末転倒ですの」
りんご飴担当の僕が一番手が空くかなぁとも思うんだけど、接客は男より可愛い女の子のほうがいいだろう。
それも考えて、販売を始める前にたこ焼きはたくさん作っておきたい。
「明日からさっそく作り置きする?」
「うん、その方がいいかもね」
「入れ物はこれでいいですの?」
「うん。アレスから貰った、その紙皿を使おう」
公式ショップのお金が1800円分残っているからと、アレスはキャンピングカーのオプションを使って紙皿を購入してくれた。
100円で50枚の紙皿は、楕円形でたこ焼きを乗せるのに丁度いい。
この900枚分を完売させられるといいんだけどなぁ。
翌日は昼まで移動をし、遠くに町が見えるところまでやって来た。
そこから町にはまだ向かわず、たこ焼きの作り置き。りんご飴もだ。
綿菓子は被せる袋がないので、これだけは現地で直接作るしかない。
三人で手分けをし、たこ焼き100食分、りんご飴50本を作った。
「売れるといいわね」
「売れてくれなきゃ困るけどね」
「ふふ。明日が楽しみですの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます