第59話

「──ック。タックってば、起きて」

「タックさん。朝ですよ」

「ん……おは……」

「「おはよう」ですの」


 目が覚めると、僕を覗き込む二人の顔があった。

 優しく微笑む彼女らが頬にキスをし、僕を起こしてくれる。

 見張りを交代したのは夜中の3時。運転席にデジタル時計があったので、時間はそこで分かった。

 もちろん合っていればの話だけど。


 今は──身を乗り出して運転席を見ると、9時を少し過ぎたところ。


「こんな時間!? 二人は朝ご飯は?」

「まだ。だってタックと一緒に食べたかったんだもん」

「でも用意はできていますの。ベッドを起こして食事にしましょう」

「ごめん、待たせちゃって。うん、お腹ペコペコだ」


 ほんのり漂ってくるのはベーコンの匂いかな。

 薄切りにしたベーコンを細かく切って、軽く炒めてから卵を流し込んでスクランブルベーコンエッグに。

 それを出来立て食パンの上に載せて、いただきます!


「んん~。やっぱり焼き立てのパンで食べる朝ご飯は、最高だねぇ」 

「ほんと~。このほーむべーかりーっていう白い箱は、魔法の箱ね!」

「こんな小さな箱でパンが焼けるなんて、タックさんの世界は凄いところですの」

「はは。でもその代わり、魔法とかが存在しない世界だったんだけどね」


 僕からすれば、魔法のほうがもっと凄いことのように思える。

 この世界だって何千年後かすれば、科学というものが出てくるかもしれない。

 だけど僕の住んでいた地球では、何千年経っても魔法は出てこないと思う。残っていればの話だけど。

 そう考えたら、この世界の方が凄いよ。


 本当に……地球は滅んでしまったのかな。

 嘘みたいな話だけど、そもそも異世界に来たなんてのが嘘っぽい話だし。

 考えても……仕方ないよね。

 今は──そう、今は与えられたこの世界での生活のことを考えよう。






 食事を終え二人の故郷へと再出発。

 キャンピングカーをアイテムボックスに戻す方法は、運転席に置かれた説明書にちゃんと書いてあった。

 運転席側のドアにある車のキーを差し込む所。ここにキーを差し込んで回せば──


「タック、それガチャの玉?」

「うん。こうすればアイテムボックスに入れられるからね」


 ぼわんっと白煙が出て、それが消えるとガチャが残る。キャンピングカーを出すときは、またパカっと開けるだけでいい。

 車の免許を持っていれば、このままキャンピングカーで移動するんだけどなぁ。

 こんなことなら免許を取りに行ってればよかった。


 けど、知らない教官と二人っきりで車に乗るとか考えただけでも、当時は吐き気してたもんなぁ。

 ムリムリ。


 人目に付きにくい場所でキャンピングカーを出していたから、街道までは徒歩で歩いて行ってあとは騎乗用ペットを取り出す。

 もちろん馬車だ。


 御者台で揺られながら、ショートカットの再設定をする。

 街道を走っている間は、モンスターもあまり襲ってはこない。それなりの速度で走っているっていうのもあるだろうけど。

 それでも視界に入るモンスターをインターフェースで確認し、ゲームの記憶からそいつらの弱点属性を思い出す。


 最近は水属性モンスターとの連戦だったから、ショートカットに登録してあるのが雷系がほとんどだったんだよな。

 対グリード用に火属性の範囲スキルもセットしてはあったけれど。


「地上だとやっぱり火が弱点なモンスターが多いな」


 この辺りのモンスターは、レベル10前後と低い。まぁ街道沿いだからかもしれないけど。

 一応詠唱速度の早い『ファイア』をF4に、壁にも使える『ファイアーウォール』をF3……そういえば、口で発音するから、キーの押しやすい位置だとか関係ないんだったな。

 覚えやすいようにしよう。


 よし。『ファイア』のレベル5がF1、レベル10がF2。

『ファイアーウォール』F3、『フレイム』F4、『ブレイムバースト』のレベル5がF5で、レベル10をF6にセット。

 ヒールはラッキー7のF7にして──あ、ものまねで覚えた戦歌バトルソング。これのことを確認し忘れていた。


 ステータスを開いてスキル欄を確認すると、戦歌レベル3というのを覚えていた。

 ものまねで覚えられるスキルのレベルは、自分のものまねスキルレベルまでしか覚えられないってあったな。

 しかもMAX10にしても、覚えられるのはレベル9まで。10取る必要はなさそうだけど、覚えられる数がスキルレベル依存なので、やっぱり10まで取ったほうがいいのか。


 戦歌の効果時間は7分。全てのステータス+7させて、物理攻撃力を+7%。HP回復速度2倍。回避率+7%とあった。

 やっぱり神官系の補助スキルだ。

 でもゲームではこんなスキル存在していない。

 僕もサブキャラで司祭を持っていたから分かる。

 ステータスを一定時間上昇させるスキルはあっても、攻撃力や回復速度、回避率なんかは、また別のスキル。セットになっているものは無かった。


 もしかしてあの人は大型アップデートで実装された、新職業の人だったのかな?

 でもインターフェースで調べた時、全員職業は船乗り──いや待て。

 僕だって職業はエターナルノービスだけど、使えるスキルは魔術師や魔導師のものだ。


 つまり戦歌を使っていた人は、転生キャラ!?

 いや、転生って言葉はこの場合おかしいのか。だって生まれ変わるっていう意味だし。

 素直に「転職」ってしてればよかったのになぁ。


 あぁ、もっといろんなスキルを貰えばよかったなぁ。

 よし、今あるポイントでものまねレベルを10にしよう!



****************************************


 名前:タック 種族:人族 年齢:18

 職業:エターナル・ノービス

 レベル:38


 HP:1537+175 MP:5040+500


 筋力:1

 肉体:1

 回避:1

 命中:1

 敏捷:1+10

 魔力:50+25+50

 詠唱:17


【習得スキル】


 HP上昇☆10 / MP上昇☆10

 ものまね10 


【ものまね】

 戦歌3

 


*残りスキルP7

****************************************



 ものまねレベルを10にしても、戦歌は3のままだな。やっぱり真似たときのスキルレベル依存なのかぁ。

 勿体ないことしたなぁ。






*************あとがき解説************************************

ステータスのHPとMPの計算が、過去の分は間違っております。

頭沸騰しそうなのでそのまま残しておきます。許してぇぇ~


ちなみに計算は──

HP:(基本数値300)+(レベル×20)+(肉体×25)+装備補正

MP:(基本数値100)+(レベル×20)+(魔力×20)+装備補正


タックの場合ここにエタノビスキルの「HP上昇lv10」と「MP上昇lv10」が

加わります。

この2つのスキルはlv1で装備補正を除外した合計数値に+5%

MAXのlv10だと+50%されます。


ステータス向上系スキルはスキルlvMAXで補正無しの数値がそのまま上乗せされるものです。(魔力のところで50+25+50と、50が二つあるのは、後ろの50がスキルで増えた分です)

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