第49話

【クエスト:『半魚人の町を守れ』をクリアしました】

【クリア報酬として経験値???獲得。半魚人からの信頼を獲得】


 グリードを倒してすぐ、そんなシステムメッセージが浮かんだ。

 経験値のところが文字化けしているのは、ここがゲームじゃなくて異世界だからかなぁ。


 勝利の余韻が落ち着くと、僕たちは港町へ引き返すことに。船乗りたちを下ろさなきゃいけないしね。

 それに半魚人のみなさんだ。

 途中の小島に寄って彼らを下ろすと、お姫さまが、


「タックさま。西へ向かう際には、ぜひ一度私たちの都へお立ち寄りください」

【クエスト:『半魚人の町を訪れろ』を受諾しました】


 と来たもんだ。

 はい、いいえの選択肢すらない。

 普通はこういうのが、ゲームのメインクエストだったりするんだけど。でも最初の段階ではい、いいえの選択肢があったもんなぁ。

 ルートが分かれているのかな?


 ま、あとで行ってみよう。きっと報酬があるはず!


 港に到着したのは、海が紅く染まるころ。

 到着するやいなや、待っていた他の船乗りたちがわっと押し寄せてきた。


「どうだった!」

「倒したのか? ダメだったのか?」


 そんな質問が飛び交う。

 そして当然のように、戦闘に参加した船乗りたちがニカーっと笑い、


「ぶっ倒してやったぜーっ!」


 と。


 一瞬だけ静まり返る波止場。

 そして大歓声。


 その後、僕たちがどうなったのか──

 そりゃあもう、もみくちゃにされたさ。

 お祭り騒ぎもいいとこ。中には海に飛び込む人まで現れる始末。

 お願いだから、酒飲んで飛び込むのは止めようね。






 宿に戻ったのはいったい何時頃だったのか。

 波止場から始まった宴は、すっかり港町全体に広がってしまった。

 窓の外では今も大勢が飲んで歌えのお祭り騒ぎ。


「今日は疲れたから、ゆっくり休みたかったんだけどなぁ」

「ふふ。今日ばかりは仕方ないですの」

「そうね。これでようやく船を出せるんですもの。港町なんて、船の行き来がなければなんの取り柄もないんだから」


 まぁそうだけど。

 だけどやっぱり眠りたい。


 グリードとの戦闘中、僕はほとんど船の上にいたけれど、これがなかなか足にきた。

 氷結ブーツの効果は、装備者周辺の水を凍らせること。だけど装備者が移動すると、案外すぐに溶けてしまう仕様なんだ。

 

 グリード戦に参加した船乗りやブレッドたちは接近戦で戦う。

 氷結部分はグリード周辺に集中していて、船は波に揺られることが多かった。

 時々負傷して下がって来た人によって、船の周辺が凍ることがある。その時に船がたまたま波に揺れて傾いた状態だったら、そのまま船は停止。

 つまり船上のメンバーは踏ん張っていないといけない状況だった。


 だから──足が痛い!

 脹脛がぷるぷるしてる!


「どうしたのタック」

「お疲れですか?」

「う、ん。足が、ね」


 そう言うと、ルーシアが「分かる!」と声を上げた。

 そうか。ルーシアも僕と一緒で船上チームだったんだ。彼女も僕と同じ痛みを感じているってことか。


 思わずルーシアとガッチリ腕を組む。


「ず、ずるいですぅ」

「え? ずるい?」

「ふふん、いいでしょ~」

「い、いいもんっ。だったら私は──タックさん、横になってください!」

「え? え?」


 アーシアにどんと突き飛ばされ、ぼよんぼよんとベッドの上に倒れた僕。


「うつ伏せにっ」

「う、うつ伏せ?」


 疑問に思いながらも、僕はアーシアに従ってうつ伏せになった。

 ぎしりとベッドがきしむ音がして、アーシアが僕の足に跨ったのが分かる。


「マッサージいたしますっ」

「え、いいの? ありがとう~」

「ず、ずるい! ア、アタシだって」


 ルーシアもマッサージをして欲しいようだ──と思ったら、またまたぎしぎしと音がしてルーシアが僕の腰の上に跨った!

 そっち、そっちなのか!?

 マッサージをされたいんじゃなくって、マッサージをしたい方!?


 アーシアが脹脛を、ルーシアが太ももを優しくマッサージしてくれる。


 うぅん。なかなか気持ちいい。


「どうですか?」

「どう?」

「うん。癒されるー」


 あとで二人もマッサージしてやらないとな。

 あぁ、それと──


「そうだ、二人にも新しいアバター装備を上げようと思うんだけど、どんな服が良いかな?」


 アバター衣装ならいくらでもある。女性物アバターは僕自身が必要ないので、全コンプリートまではしていないけれど。

 なんなら公式ショップで買ってもいいし、ガチャを回すのだっていい。


 そうだ!


「ガチャ、しないか?」


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