第41話

 翌朝。今日はブレッドも一緒に船着き場までやってきた。


「君の今日の衣装はいただけないな☆」

「はぁ……」

「華麗さが足りない。それに引き換え先日の衣装は素晴らしかったよ☆ミ」


 今日のアバター衣装は、アニメとコラボしたもので学生服だ。

 日差しもあったので半そでのカッターシャツ、そして濃いグレーのズボン。これだけだ。


 どうやらブレッドは自分が履く白いタイツに似た、ピッチピチのズボンがいいと遠回しに言っているようだ。

 やなこった。


 やって来た船着き場。

 船は出せなくても船乗りたちはそこにいて、壊れた船の修理なんかをしていた。

 大工を雇えばお金がかかる。

 船を出せないならそのお金も稼げない。


「だからてめーらで修理してんのさ。まぁ簡単な修理ぐらいはできるんだけどな」


 と、昨日僕らが声を掛けた船乗りが教えてくれた。

 双子の獣人を連れているから珍しいって、覚えていてくれたようだ。


 お金か。

 うん、お金ね。


「船乗りのみなさんって、モンスターと戦えますか?」


 そう尋ねると、何当たり前なこと聞いてんだって目で見られた。

 じゃあ試しに見せて貰いましょうか。



****************************************


 名前:オルズ 種族:人族 年齢:31

 職業:船乗り

 レベル:39



 筋力:57

 肉体:48

 回避:14

 命中:13

 敏捷:10

 魔力:1

 詠唱:1


****************************************



 筋力と肉体スゲー!

 他の船乗りを見ても同じような感じ。

 戦える……戦えるよこれ!


「船の修理費、僕が支払います。代わりにモンスター退治に行きませんか?」


 そんな提案を僕はした。

 まぁ当然だけど船乗りたちは首を捻る。

 アーシアとルーシアは口をパクパクさせ、ブレッドは笑っていた。


「ちょ、ちょっとタック! 船の修理費を出すって、あんたそれがどんだけ大金だか知ってるの!?」

「そ、そうですタックさん。きっとすっごいお金なのですよっ」


 つまり二人も具体的な金額は分からない、と。

 まぁ手持ちのお金が足りないなら、課金アイテムを売り払ってもいい。

 課金ポーションとかならきっと売れるだろう。

 使用制限付きのスキルを封じたアクセなんかも、魔法アイテムとして売れる気がする。


「お金、どのくらい必要ですかね?」


 ニッコリと尋ねると、船乗りたちは顔を見合わせ笑いだした。


「がーっはっはっは。おいおい坊主。そんな金出せる訳ないだろう」

「まぁあの船一隻の修理費だけでも出してくれりゃー、喜んでモンスター退治に参加してやるけどよ。それでも10万Lはくだらねーぞ」


 10万か。6桁じゃないか。

 11桁L所持の僕から見れば、まだはした金の範囲だね。


「じゃあその船とあっちの船。二隻の修理費として30万L支払いますよ」


 僕はそう言ってニッコリほほ笑んだ。






「バケモンが出るのはこの辺りの海域でして」


 修理中の船の上で地図を広げる。

 それを囲んで五人のマッチョ船乗りと僕、アーシアとルーシア、それにブレッドとアリアさん。

 正直、狭い。


「ここから出向してどのくらいですか?」

「へぇ。だいたい3時間ってところですかね」


 実際にお金を見せると、船乗りたちの態度が一変。

 うん。実物見せなきゃ納得しないよね。


「けど坊ちゃん」


 坊ちゃんっていうのは僕のこと。


「船はほとんど修理が必要なほどボロボロで、バケモノ退治はしばらく先になりそうでやすぜ?」

「え? この船は? 見た目は甲板にちょっと穴が開いてる程度に見えるけど」

「船底にも穴が開いてまさぁ」

「あぁ……ダメかぁ」


 でも修理が終わるの待ってるぐらいなら、南の小島を橋で渡るコースでもいいし。


「タック。南のルートはお勧めしないな☆」

「え、なんで?」

「あぁ、そうだなぁ。獣人のお嬢ちゃんたちを連れてるなら、南はやめた方がいい」

「え?」


 船乗りのおじさんたちもブレッドの言葉に賛成する。


「南の橋を渡るルートは、通行料が橋ごとにかかります。そして獣人はその橋を通ることを、許されておりません」


 アリアさんが無表情でそう言った。


 そんなところでも差別がされているなんて……。


 だけどどうしよう。

 船の修理には一カ月はかかるという。


 船……代わりの船……。


 あ、あった。


 西の大陸実装記念ライドガチャ。

 襲撃イベントを想定した、24人乗りの──


「中型クルーザー!」





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