第41話
翌朝。今日はブレッドも一緒に船着き場までやってきた。
「君の今日の衣装はいただけないな☆」
「はぁ……」
「華麗さが足りない。それに引き換え先日の衣装は素晴らしかったよ☆ミ」
今日のアバター衣装は、アニメとコラボしたもので学生服だ。
日差しもあったので半そでのカッターシャツ、そして濃いグレーのズボン。これだけだ。
どうやらブレッドは自分が履く白いタイツに似た、ピッチピチのズボンがいいと遠回しに言っているようだ。
やなこった。
やって来た船着き場。
船は出せなくても船乗りたちはそこにいて、壊れた船の修理なんかをしていた。
大工を雇えばお金がかかる。
船を出せないならそのお金も稼げない。
「だからてめーらで修理してんのさ。まぁ簡単な修理ぐらいはできるんだけどな」
と、昨日僕らが声を掛けた船乗りが教えてくれた。
双子の獣人を連れているから珍しいって、覚えていてくれたようだ。
お金か。
うん、お金ね。
「船乗りのみなさんって、モンスターと戦えますか?」
そう尋ねると、何当たり前なこと聞いてんだって目で見られた。
じゃあ試しに見せて貰いましょうか。
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名前:オルズ 種族:人族 年齢:31
職業:船乗り
レベル:39
筋力:57
肉体:48
回避:14
命中:13
敏捷:10
魔力:1
詠唱:1
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筋力と肉体スゲー!
他の船乗りを見ても同じような感じ。
戦える……戦えるよこれ!
「船の修理費、僕が支払います。代わりにモンスター退治に行きませんか?」
そんな提案を僕はした。
まぁ当然だけど船乗りたちは首を捻る。
アーシアとルーシアは口をパクパクさせ、ブレッドは笑っていた。
「ちょ、ちょっとタック! 船の修理費を出すって、あんたそれがどんだけ大金だか知ってるの!?」
「そ、そうですタックさん。きっとすっごいお金なのですよっ」
つまり二人も具体的な金額は分からない、と。
まぁ手持ちのお金が足りないなら、課金アイテムを売り払ってもいい。
課金ポーションとかならきっと売れるだろう。
使用制限付きのスキルを封じたアクセなんかも、魔法アイテムとして売れる気がする。
「お金、どのくらい必要ですかね?」
ニッコリと尋ねると、船乗りたちは顔を見合わせ笑いだした。
「がーっはっはっは。おいおい坊主。そんな金出せる訳ないだろう」
「まぁあの船一隻の修理費だけでも出してくれりゃー、喜んでモンスター退治に参加してやるけどよ。それでも10万Lはくだらねーぞ」
10万か。6桁じゃないか。
11桁L所持の僕から見れば、まだはした金の範囲だね。
「じゃあその船とあっちの船。二隻の修理費として30万L支払いますよ」
僕はそう言ってニッコリほほ笑んだ。
「バケモンが出るのはこの辺りの海域でして」
修理中の船の上で地図を広げる。
それを囲んで五人のマッチョ船乗りと僕、アーシアとルーシア、それにブレッドとアリアさん。
正直、狭い。
「ここから出向してどのくらいですか?」
「へぇ。だいたい3時間ってところですかね」
実際にお金を見せると、船乗りたちの態度が一変。
うん。実物見せなきゃ納得しないよね。
「けど坊ちゃん」
坊ちゃんっていうのは僕のこと。
「船はほとんど修理が必要なほどボロボロで、バケモノ退治はしばらく先になりそうでやすぜ?」
「え? この船は? 見た目は甲板にちょっと穴が開いてる程度に見えるけど」
「船底にも穴が開いてまさぁ」
「あぁ……ダメかぁ」
でも修理が終わるの待ってるぐらいなら、南の小島を橋で渡るコースでもいいし。
「タック。南のルートはお勧めしないな☆」
「え、なんで?」
「あぁ、そうだなぁ。獣人のお嬢ちゃんたちを連れてるなら、南はやめた方がいい」
「え?」
船乗りのおじさんたちもブレッドの言葉に賛成する。
「南の橋を渡るルートは、通行料が橋ごとにかかります。そして獣人はその橋を通ることを、許されておりません」
アリアさんが無表情でそう言った。
そんなところでも差別がされているなんて……。
だけどどうしよう。
船の修理には一カ月はかかるという。
船……代わりの船……。
あ、あった。
西の大陸実装記念ライドガチャ。
襲撃イベントを想定した、24人乗りの──
「中型クルーザー!」
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