第34話
「お頭、ガキどもを見つけやしたぜ」
僕とアーシア、そしてルーシアの三人は山賊に捕まった。
後ろから剣と突き付けられ、僕らは手を上げ奴隷商人の前に連れていかれる。
頭ってこいつのこと?
「おぅ。ご苦労。はっはー、確かに良い女じゃねえかぁ」
あ、違ったようだ。
太った男の横にヒョロっとした男が立っていて、肉壁で見えなかったんだ。
「手を付けられちゃあ困りましゅですよお頭さん。その娘たちは大事な商品なんでしゅ。あなた方が一生かかっても払えないようなお金で取引されるのでしゅから」
「けっ。分かっているさ。その代わり、たんまり礼はしてくれるんだろうなぁ?」
「えぇ、もちろん」
ずいぶんと二人には大金がかけられているようだ。
まぁ僕には関係ない。
ここで例の三人組が登場。
「兄貴よぉ、このくそガキですよ。俺らに恥をかかせてくれたのは」
「え? お前ら山賊の仲間だったの!?」
驚いた。こんな所で繋がっているなんて。
どうりで人相悪い訳だぁ。
「こんな時期に仲間が凍死してたんでおかしいと思ったんだよ。まさか弟分を氷漬けにしたガキの魔術師の仕業だったとはな」
「あぁ、そこで足がついたんだ。失敗したなぁ」
同じ魔法を使うんじゃなかった。
「む、村の方々を解放してくださいです!」
「そうよっ。この村の人には関係ないでしょ!」
「じゃかーしいっ! くっそ。魔術師のガキといい獣人といい、人のこと舐めやがってっ。おい、連れてこい!」
「へいっ」
山賊の親方がそう言うと、指示された男はピューっと口笛を鳴らした。
すると奥から村長さんと他数名が連れてこられる。
同時に人相の悪い男たちがぞろぞろぞろ。
やったね。ここに全員集まってくれると、僕としては大助かりだ。
「ん? 何人か足りねーみたいだが。どっかで遊んでんのか」
「この村にゃあ若い女が少なかったですが、年増でも女は女っすからねぇ」
「まぁそうだな。がはは」
なんてことを平気で口にする奴らだ。
だけどそんなに笑っていていいのかなぁ。仲間が少ないって、その原因をしっかり調べるべきなんだよ。
この場にいないジャングさんには、あるガチャ指輪を渡してある。
ネタ装備の姿隠しのマントと違い、気配を消してなお移動できる『シャドウ・ウォーキングリング』だ。
シーフの上位職スカウトで使えるスキルで、相手に見つからず移動できる効果があるのが『シャドウ・ウォーキング』
ただし移動できるだけ。スキルを使えばバレてしまう。
彼には今、姿を隠して移動してもらい、仲間と離れた位置にいる山賊たちを、ひとりずつKILLしてもらっている最中だ。
だから僕らはここで奴らの注意を引いている。
できるだけ
「42いるわ」
「わかった。じゃあそろそろ……」
僕らは打ち合わせした通り、それぞれの準備に取り掛かる。
アーシアには『スパイダー・ウェーブリング』を。
ルーシアには僕は取っていない魔導士スキル、『マッドレイクリング』を。
マッドレイクは一定範囲の地面を、泥の沼のようにしてしまうスキルだ。だからこそ、野外じゃないと使えないというデメリットがあって、スキルを取らなかった理由だ。
そして僕は――
「さっきから何ごちゃごちゃ言ってんだ! クソガキ、てめぇ魔法の呪文なんて唱えようもんなら、こいつら全員ぶっ殺すからな!」
「ひ、ひいっ」
「ま、待って!
人質にされた村長さんらに刃を向ける三人組。
他の山賊たちが笑いながら、三人組に近づく。
「そっちの二人は私が貰っていくでしゅよ」
奴隷商人が動――かない。代わりに傭兵五人が奴の座る椅子を持ち上げ、ゆっくりと動き出した。
自分の足で歩かないのか。いや、もう歩けないんだろうなぁ。
というところでいい位置へと入ってきた奴隷商人と山賊たち。
「F5」
「は? 今なんか言ったか?」
後ろでは三人の山賊が僕らに剣先を向けている。
そして現れる本物の魔法陣。
「ん? なんだこの光ってのは」
「あ、兄貴! 魔法でーーシビビビビッ」
F5にセットしたのは、ライトニングLV1。1だから詠唱時間も短い。
雷属性のダメージを与え、同時に感電という状態異常を与える。
つまり痺れて動けなくなるのだ。
「"スパイダー・ウェーブ"!」
「"マッドレイク"!」
二人が敵の行動を阻害するスキルを唱える。
わずかにライトニングの範囲からはみ出した連中の動きを鈍らせるためだ。
「な、なんだこりゃあ! か、体が動かねぇ」
「F4。村長さんたち、今のうちに!」
「は、はいっ」
F4-―レベル10、ライトニング。
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