第13話
「"ダブルアロー"!」
遺跡を出てさっそく試し狩り。
さすがに遺跡の中は適正レベル25だから、やめておいた。
森の中には昨日のコボルトがいて、雑魚ならレベルは3しかない。
レベル1の二人だが、僕が渡した装備はレベル20ぐらいのモンスター相手にも使える性能がある。
それにステータスがそこそこあるので、十分すぎる成果を出していた。
「ルーシアずるいですっ」
「ふふん。遠距離で仕留めるほうが早いんですもの、仕方ないわよ」
「私だってぇ~。えい!」
コボルト相手に剣を横に一閃。
アーシアの一撃でコボルトが倒れ、それを見た残りのコボルトたちが慌てて踵を返した。
だけどコボルトたちが逃げることはできず。
背後から心臓に一本の矢が突き刺さるもの。
首筋を斬りつけられ、鮮血をぶちまけるもの。
「タックさん!」
「タック!」
「分かってるよ。"スパーク"!」
指先から放たれた電気の塊が、ターゲットであるコボルトに命中。
そのコボルトの周辺にいた奴らも感電し、地面へと倒れる。
スキルレベルは5しかないが、僕とコボルトにはレベル差があるうえに、装備による魔力の底上げで十分即死させられた。
「自分にあったスタイルでの戦いはどうだった?」
「戦いやすいわ!」
「えぇ、すっごく戦いやすいです。これならタックさんへの恩返しもできそう」
「え……ぼ、僕への恩返し?」
鶴の恩返しじゃなく、狐の恩返し?
「あ、あんたにはこれと、それにこれを貰ったし。しょ、職業だって変えて貰ったもの。ア、アタシたち獣人族が、礼儀知らずだと思われたくないわ」
ルーシアは顔を真っ赤にして、巫女の衣装と弓を指さす。
アーシアも頷いて、こちらはにっこりと笑った。
「そ、それにあんた……300年前から時間を超えてやってきたんでしょ?」
「奴隷商人に攫われた私たちがいうと説得力ないですが、タックさんの正体がバレちゃうと、絶対捕まっちゃうと思うんです」
「アタシたちはあんたのおかげで、こうしてまともに戦えるようになったわ」
「タックさんは魔術師さんのようですし、私たちがしっかりとお守りします!」
「魔術師なんて、魔法が打てなくなったらただの棒ですもの」
肉壁じゃなく、棒……ですか。
うん、まぁ間違ってないと思う。
確かに前衛がいると安心できる。詠唱を必要としない、それでいて瞬間火力は前衛以上のアーチャーも頼もしい。
僕はスキルの力を封じたアクセサリーも持っていて、回復ならそれで充分足りるだろう。
それにポーションだってあるし、何より課金アイテムがある!
残高15憶円。
普段通り毎月100万課金しても100年は持つ!
「ありがとう。僕もどうしてこの時代にいるのか分からないし、不安だらけだ。二人がいてくれて心強いよ。戦いのサポートなら任せて!」
それで、僕たちはこれからどうすればいいのだろうか。
二人は故郷の村を失ったし、攫われて一か月近く馬車で移動してここがどこだかも分からないという。
まぁそれはこちらの方で分かるんだけども、なんせ300年の間に変わった地名もあるだろう。
何よりこちらの地図は二人には見えない。
「大陸の東の方だっていうのは分かっているの」
「太陽の昇る方角に進んでいましたから」
太陽が東から昇って西に沈む。僕が知っている常識と同じだ。
イリスの森があるのは、大陸の中央にあたる部分。
この森の東に、マップを四つ行くと獣人族の国があるが、今は帝国領になっているという。
彼女らはここから西のほうの出身で、そこから一か月かけて運ばれて来たのだとか。
「なんにしても、まずはどこかの町に行かなきゃならないけど……二人を連れて町へは行けないし、だからといって……」
対人恐怖症の僕が、ひとりで町なんて行ける気がしない。
行くだけならまだしも、行って、やるべきことをやる――なんて、無理だ!
僕の手持ちのアイテムの中にないもの。それを町で買いそろえる必要がある。
主に野宿をするのに必要なものだ。
ゲームじゃあテントとか毛布とか、必要なかったもんな。だからアイテムとして存在すらしていなかった。
だけどリアルになると、それらが必要になる。
「二人に町まで行って貰うわけにもいかないし」
「タックさん、そのことなんですけれども」
「ア、アタシたちに考えがあるわ」
「考え?」
二人はどこかもじもじしたようすで僕を見つめ、それからこう言った。
「わ、私たちをタックさんの奴隷にしてください」
「も、もちろんふりだけよ。ア、タックがご主人様のふりをしてくれれば、それでいいんだからねっ」
それが本当にいい考えなのか、今の僕には考える能力すら……なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます