第11話

「タックはこの遺跡のことを知っているの?」


 そんなルーシアの一言から、僕たちは遺跡の探索をすることになった。

 まだレベリング用のダンジョンだし、各種指輪もあるから大丈夫だろう。

 彼女らだってこの世界で職業を持った住人だ。きっと僕よりレベルが高いはず。


「そんな風に思っていた時期が、僕にもありました」

「何を言っているのタック!? ど、どうすんのよこいつらぁっ」

「囲まれていますっ。囲まれていますぅーっ」


 遺跡へと下りて正面の通路を200メートルほど進むと、第一モンスターを発見。

 ダンジョンではモンスターも徒党を組んで襲ってくる。最初のモンスターはグレムリンという、小さな小鬼のモンスターが3匹だ。

 それに驚いたアーシアが通路の奥へと逃げてしまい、巡回モンスターの索敵範囲に入ってしまった。

 そして今、計5匹のモンスターに囲まれている。


 アーシアは混乱して弓を引くが、矢の命中率は50%ほど。

 ルーシアは片手剣を振るが、グレムリンの爪であっさり弾かれている。


 もしかして、この二人のレベルって……1だったりするのか!?


「"フレイムバースト"」


 指輪を消費して雑魚を蹴散らし、すぐさま野宿した通路へ引き返す。


「ぜぇ、はぁ。ふ、二人のレベルって……聞いても分からないんだったよね」

「す、すみません……。実は私たち、あまり才能がなくって……」

「た、戦えないわけじゃないのよっ。ス、スライムやゴブリンぐらいなら、倒せるんだから!」


 でもそれ、レベル1から3しかないモンスターだから。

 そうだ。インターフェース画面で、他人のステータスも見れたんだっけ。

 ほとんどの人はステータスが装備を見られたくないから、公開設定をOFFにしているけれど。

 デフォルトだとON設定だ。

 もしかして見れたりするんじゃないかな。


「試しに二人のステータスを見せて貰うよ。あ、ステータスっていうのは、能力値だと思ってね」

「わ、私たちの能力値ですか?」

「それを見て、アタシたちの強さが分かるの?」


 僕は頷いてから「ESC」と口にした。

 開いたインターフェース画面から、まずはアーシアの頭上にある職業アイコンをタップ。

 

 出た……。

 職業アイコンの下に【パーティー申請】【フレンド登録】【取引】、そして【ステータス】の四項目が書かれたウィンドウが現れた。

 いろいろと気にはなるけれど一つずつ片づけていこう。まずはステータスだ。



****************************************


 名前:アーシア 種族:獣人 年齢:16

 職業:アーチャー

 レベル:2


 HP:645+1000 MP:120+500


 筋力:25

 肉体:6

 回避:19+10

 命中:2

 敏捷:20+10

 魔力:1

 詠唱:1


【習得スキル】

 ----

****************************************



 やっぱりレベル2だあぁぁっ。

 じ、じゃあルーシアも?



****************************************


 名前:ルーシア 種族:獣人 年齢:16

 職業:ソードマン

 レベル:2


 HP:620+1000 MP:320+500


 筋力:7

 肉体:5

 回避:15

 命中:30

 敏捷:20+10

 魔力:1+10

 詠唱:1


【習得スキル】

 ----

****************************************



 あぅあぅあぅあぅ。やっぱり2だよ。

 この遺跡、実際には推奨レベルは25だ。

 僕は下級職の魔術師、そして上級職の魔導士とカンストさせ、スキルもレベルの高いものを持っているし、指輪もあるからなんとかなる。

 だけどレベル2はさすがに無理だ。それに二人とも、職業はあってもスキルがな……え?


「スキルがない?」


 どうして!?


「どうだったの、タック」

「私たち、強くなれそうですか?」

「いや、あの……ふ、二人はスキルを――えぇっと、技みたいなものは?」


 その問いに二人の視線がさっと明後日の方角に向く。

 つまりは、ない。


 いや、なぜないんだろう。ゲームとは違うからか?

 ステータスをもう一度よく確かめ、何か見落としているものがないかと探した。

 スキルはどこを探してもない。ないけど……ステータスに違和感があった。


「アーシアは筋力が高く、命中が低い。なのにアーチャーなのかい?」

「え?」

「逆にルーシアは筋力はそれほど高くないけれど、命中が抜きんでているのに……ソードマン?」


 ステータスの横にある数字のうち、右側の+〇の部分は装備補正だ。

 左側が彼女ら本体の数字になる。


 レベルが2なのに高いのは、彼女らがゲーム仕様じゃないからかもしれない。

 そこはひとまず置いといて、ステータスに対しての職業との相性が悪い。

 むしろ逆にすればいいのに。


「二人はどうやって職業を選んだんだい?」


 尋ねてみると、二人は恥ずかしそうにこう答えた。


「周りの人が、私はアーチャーが似合うからと」

「みんなにソードマンがいいって言われたから」

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