第4話
インターフェースを開いたままなので分かってしまった。
後から現れたマッチッョはコボルトキング『剛腕のボブ』。レベル20のネームドモンスターだ。
「ル、ルーシア……」
「くっ。武器さえあれば」
そう言えば二人は武器を装備していないようだ。それに防具も。
ボロボロの汚れた服に、よく見れば裸足。それに、首には鉄の輪っかが見える。
「アーシア、逃げるわよ! 走ってっ」
「で、でもルーシア。あのゾンビさん」
「あんなのに構ってる暇はないんだからっ。人族なんて、放っておきなさいよ」
「でもっ」
お、僕のこと、気にかけてくれてるのか。アーシアって子のほうは。
二人は踵を返し逃げようとしたが、いつの間にかコボルトは僕たちをぐるりと取り囲んでいた。
「くっ。こっちもダメっ」
「ルーシア、どうしよう。こんな所で、私たち死んじゃうですか?」
死……ぬ?
え、僕、コボルトみたいな下級モンスターにやられるの?
魔導士レベル99のカンストだったんだ。コボルトなんか群れで襲われても、魔法一発で全滅させていた僕が……。
そうだ。
魔法使えるんじゃないか?
装備だってクリックひとつで出来たし、ショートカットにもスキルが登録されたままだ。
なら――
「"フレイムバースト"!」
火属性最大魔法にして、広範囲魔法。
これでいつも雑魚は焼き殺していた。
【MPが不足しています】
「はあぁぁ!?」
な、MPが足りない?
あ……。転生したときにステータスがリセットされたんだった。
魔力1のままだし、MP100しかないよ。
フレイムバーストの消費MPは、スキルレベル1でも250なのに。
うん。撃てるわけないね。
『ウオオォォォッ』
剛腕のボブが吠え、コブルトの輪が少しずつ縮まってくる。
マズい。MP100でも撃てる魔法……単体魔法なら使えるが、それじゃあこいつらを一掃できやしないっ。
そ、そうだっ。
MPが無くても撃てる魔法がある!
「指輪だ。ガチャで大量にゲットした指輪を――」
スキルが封じ込められた指輪。
魔法から物理攻撃スキル、それに回復や補助までなんでも揃っている。
無制限に使えるのではなく、10回使ったら壊れる仕様のアクセサリーだ。
そのうちイベントの景品か何かにしようとずっと取ってあったんだけれども――これを使おう。
じわりじわりと輪を縮めるコボルトら。
僕は指輪を嵌めた右手を掲げるとスキル名を唱えた。
「"ファイアーストーム"!」
術者を中心に炎の竜巻を起こす、火属性魔法。
僕たちを取り囲んでいたコボルトのほとんどは、この範囲内に入っていた。
【MPが不足しています】
また!?
【ファイアストームリングを使用しますか?】
【はい/いいえ】
そうか。
「はいだはい! 今すぐはい!」
刹那、足元に渦を巻く風が生まれた。
その風はたちまち炎を纏い、そして天高く伸びた。
『ギャワンッ』
『オオォォンッ』
「きゃあぁぁっ」
「いやぁぁぁっ」
コボルトたちの断末魔に交じって、狐少女の悲鳴もあがる。
ゲ、ゲーム仕様なら、敵モンスターにしか魔法も当たらない……よね?
竜巻が天に向かってすぅっと消えた後、地面にはコボルトの死体が転がっていた。
「アーシア、ルーシア!」
ぷすぷすと煙が上がる中、彼女らは無事だった。
「ごめん、大丈夫だった? ビックリしたよね、ごめんっ」
「な、なにが起こったの」
「すごい魔法なの」
「二人とも、僕の後ろにっ。もう一度魔法を撃つ!」
ファイアーストームリングはクールタイム中で使用できない。
だが指輪は全種類網羅している。次はこれだ!
コボルトは動物タイプのモンスターだというのもあって、火が弱点だ。
「さっきは不発だったが、今度はこそ! "フレイムバースト"」
目標地点に爆発を起こさせ、あたりを焼き尽くす魔法。
スキルを唱えてリングの使用を選択すると、視界に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
ゲームでは魔法陣をカーソルに見立て、目標地点を設定できる。
ここも同じなのか。
なら、魔法陣をボブに被せるように。
ホログラムモニターを操作するような感じで魔法陣を手で移動させ、マウスをクリックする感じで反射的にトントン――。
奴の目前に小さな炎が出現。
すぐにそれは米粒サイズの収束した炎となり、そして爆ぜた。
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