100.裏話 一

「ねぇ、須藤」


「ん?」


「電車、まだ来ないね」


「そう、だな……。ってか俺らしかいねーのな」


「ほんと、静かすぎてヤになっちゃうわ」


「はは、でも俺はこういうの、嫌いじゃないけどな」


「そう?」


「そう」


「……」


「……」


「……アンタはさ。あの二人どう思う?」


「突然だな……」


「そう?」


「そう」


「いいじゃないそんなこと。それで? どう思ってる?」


「どうって訊かれると難しいな。見てるこっちがムズムズするし、おなかいっぱいにさせられるし、あれだけ相楽さんにベッタリされる祐司が羨ましくもある」


「……アンタはベタベタされたいの?」


「俺!? ないない、そりゃくっついてきてくれる、っての? それくらいだったら嬉しいけどよ、でも相楽さんくらいにベッタリされるのはノーセンキュー」


「ふぅん。てっきり男ってベタベタされたいものだと思ってたけど」


「いや、それで合ってるぞ? チヤホヤされるのはある種のロマンみたいなものだしな。けどな、なにごとにも適量ってモンがあるだろうよ。相楽さんは他人ヒトの目があっても構わずに、だからな」


「じゃぁ、例えば他人の目があるところだと、どこまでがセーフ? ハグとか、手を握るとか、キスとか」

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