101.裏話 二

「教室でってことだよな? そうだな、もし俺がそれをされる側なら……。手を繋ぐまでかな」


「どうして?」


「どうして? 言わずもがな、ってやつじゃないか。あの二人のやりとりを見せつけられて、さんざんウンザリさせられてきたからな。ハグとかその典型でさ、そういうの周りに悪いだろ」


「そう? 私はハグもいいと思うけど」


「はぁ? なんだよそれ、非モテから恨みを買うだけで、めっちゃ恥ずいしイイコトなんてひとつもないだろ」


「あれは威嚇いかくしてんのよ」


「威嚇?」


「『これは私の、だから狙っても無意味なんだから』とか、『私のに手を出したら、ただじゃ済まさないからね?』ってアピールじゃんか」


「まじかよ」


「まじよ。そしてそのアピール……独占欲? 私もよく分かんないけど、そういうドキドキが恋をはぐくむのよ」


「……でもまぁ、抱き合うのは裏でやってくれって感じかな、俺は」


「裏でならいいんだ?」


「教室ではどうかと思うけどな。どっか空き教室とか階段の影とかなら全然。好きにすりゃいいんじゃないか?」


「学校だよ? いつ見られちゃうか分かんないのに、いいの?」


「……難しいな。でも……仕方ないんじゃないか? その、したくなっちまったんならよ。止められねぇんだろ? だったら、我慢するのも毒だろが」


「ふふ、照れてる」


「……悪いかよ」


「悪くない」


「そうかよ」


「そうよ」


「……」


「……例えば、だけど」


「ん?」


「空き教室とか、階段の影みたいなさ」


「うん」


「外だけど、ひとけがないところでさ」


「……」


「したくなっちゃったら、してもいい、のかな」


「なにを」


「……キス、とか」


「……………………は?」


「……っ! いい、の、かなっ!」


「……は!? な、えっ?」


「……」


「ちょ、待、え!?」


「あんなこと言うアンタが悪いんだから。こう、ギュ~ってきちゃったの。だから、うん、仕方ない。しかたない」


「ぇ、ちょ、えっ」


「だからこれはセーフ、ね?」


「待っ――――」

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