65.ここだけの話 二

「おう。……で、出店場所の確認だっけ?」


 仮決めの地図と境内を見比べる。


「あぁ、これは重要な仕事だぜ? なにせ売り上げに直結するからな」


 家を出るとき、小湊さんは須藤に地図を託していた。それに気を良くして須藤は張り切っているみたいだが、いいように使われているだけだぞ。

 まぁ、野暮なことを言う必要もない。地図にある空きスペースを確認し、境内のあちこちを歩いて確かめる。


「まずこの場所は、っと」


 境内の一番外周、角地かどちにあたる場所だ。


はじっこか。あんまり目立たないか?」


 田の字型に通路があり、その中の四つのエリアと外周に屋台が並ぶ形になっている。正面参道沿いを中央通りとすれば、そこが最も人通りが多くなるのは自明だろう。


「一番遠い角地だからな。目につかなさそうだ」


「ま、角ってだけあって広さは十分だけどな」


 広いということはそれだけ作業がしやすいということでもある。そういう意味ではありがたいが、売れなければどうしようもない。


「じゃ次だ。ここは……、参道沿いか。わりに少し狭いか?」


「少しどころかめちゃくちゃ狭いぞ」


 こちらは人通りを考えれば一番目立つ場所にある。がしかし今度は狭すぎて、四人、四谷さんも含めれば五人か、それだけ集まると全く動けない気がする。


「あれだ、俺らが選ばなかった場所は休憩処になるんだよな?」


「そう言ってたな」


 なにも置かず、地面が向きだしになるとそれはそれで見た目が悪いとかなんとかで、テントを張ると言っていた。


「でもここに休憩所ってのは……あれだ、ゴミ捨て場だなここは」


「それぐらいしか使えない、か」


 もっとこじんまりとした屋台なら入ったろうが、このスペースは休憩所にもなりえない。

 目立ちやすさ、広さ、両隣と正面がなんの屋台なのかなど、ひとつずつ慎重に確認しながら調査を進めていく。

 これらの情報をもとに、後日また集まった時に千佳や小湊さん含めて決める算段になっている。

 あちらはあちらで玉子串の提案が通ればいいが、うまくいっているだろうか?

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