63.玉子串 三

 座卓に運ばれたそれを、須藤はためつすがめつ不思議そうに見やる。


「へえ、玉子串ってこうなってんのか」


 紙コップをひとつとり、串を一本取り出すと裏表、振ってみたりスンスンと匂いを嗅いだりとせわしない。


「なにアンタ、感動薄くない? もっとあがめなさいよ。ほらひざまずけ」


「え?! 邪魔になんねぇようにこっちでおとなしくしてたのに!?」


「それはそれ、これはこれ。じゃないと食べさせてあげないわよ」


 ちょ、小湊さん。須藤にも食ってもらわなきゃ困るんだけど。


「って言われてもよ、どう崇めろってんだよ」


「簡単よ、手を合わせて、私に続けてこう言うの」


「おう」


「神様仏様小湊りつ様、感謝の念にえませんありがとうございます」


「神様仏様小湊り……、って言えるか!」


「あ、照れた」


「っく!」


「ささ、食べちゃいましょ? いただきますっ」


 パクつく小湊さんはドライだ。


「なんだったんだよ今のは!?」


 知るか、こっちが聞きたいわ。


「んー、あっま!!」


 至福の声だ。


「ったく」


 小湊さんに続き、須藤も口へ運ぶ。


「私的には超良さげなんだけど、アンタはどう?」


「……聞いてくれるのか?」


「当然。ま、これでダメとか言い出したら殴るけど」


「殴られんのかよ!」


「あ、歯向はむかう? はむかっちゃう?」


「そうは言ってねぇ! うまかった、なんも文句ねぇよ!」


「それでは屋台の出し物は玉子串で決っ定ー! 早速計画書練るよ!」

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