60.人気屋台のつくりかた 二

「それで小湊さんはなにかある?」


 順繰りに案を上げ、あと言ってないのは小湊さんだけだ。


「んー、私は食べ物に賛成かな。あ、でも私、あんまり料理しないのよね。だからったのはちょっと厳しいかな……」


 小湊さんも食べ物に賛成か。ということは中立の千佳を除いて二対一、ということは食べ物系の屋台になるか。


「そうだ、四谷よつやさんからなにか聞いてないか?」


「うん、今のところだけど、何屋さんがどこに出るかって仮決めの地図はもらったよ? あ、それと、『なるべくかぶらないようにしてくれると助かる』とかなんとか」


「トラブルの元ってことか……」


 屋台のスペースが争いのタネになるんだから、焼き鳥はだれそれさん担当というルールも当然あるのだろう。


「でも屋台の種類なんてある程度決まってるじゃん? だからもし、私らが焼き鳥の屋台をしたとして、競合店とは遠ざけるように屋台配置するから気にしないで、っても言ってたよ」


 青年団の人手不足で空くスペースは五ヵ所ほど。それだけあればそういう都合もできるか……。


「じゃ、結構なんでもできるな。となるとより、なにがしたいかってことになってくるけど……」


 チラと須藤を見る。


「あー、どうしても射的してぇってワケでもねぇから、二人がい物系ってならそれでいい」


 よし、食べ物系ってことは決まったな。あとはなにを出すかだが……。


「でも、せっかくならお客さん集めたいかな」


「俺も俺も。やるなら一番取りたいぜ」


 須藤が頷いて同意した。


「なら……、俺らが焼き鳥とかしても、本職には勝てないしな……。人を集めるのは難しい気がする」


 付け焼刃で作るものなんてタカが知れてる。


「だったら新しいことしたいかな。この地図に載ってる以外の食べ物屋さんてなにかある?」


 焼き鳥、焼きそば、はし焼きクレープかき氷、ベビーカステラにりんご飴、綿菓子ポップコーンにアユの塩焼き……。完全に出揃ってないか?

 地図とにらめっこしながらうんうんとうなることしばし。あ、と千佳が声を上げた。


「玉子串、なんていかがでしょうか?」

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