57.域外の見立て 二

「ヒー、ロー?」


 千佳が?


「ま、正直? アンタら見てて、すごいガキっぽいなって思ってたのよ。恋愛ごっこっていうか? 中学生じゃあるまいし、ってね。別に他人の恋愛沙汰に興味ないからどうだっていいやって思ってたけど、こうなったら一蓮托生よ。とにかく全部、アンタが悪い」


「……」


 聞きたいことはたくさんあった。言い返したいこともある。けれどそのどれもがカタチになる前に、千々に切り刻まれて飛んでいく。だめだ、なにも考えれない。


「だからね? 今は、相楽さんがどうこうという話じゃなくて、アンタがどうしたいか、どうなりたいか、って話だと思うわ。アンタが抱えてる負い目を克服できるか、それが一番重要なんじゃないかな」


 …………。


「そろそろ電車が来る時間ね。ささ、アンタは一回外に出なさい。とりあえずアンタが遅れてることにして、ツーショットを作らせて? あ、十分くらいで戻ってきてね、あんまり長すぎても不自然だから」


 千佳に対する、負い目。あの日の千佳と、今の千佳、お姫様と、ヒーローと……。

 と突然、背中をバシっと叩かれた。


「ほら、シャキッとするっ!」


「……助かる。十分くらいか、分かった。ちょっとその辺、走ってくるわ」


 このあと千佳にも会うんだ。一度気持ちを切り替えなければ、千佳に怪しい目で見られてしまう。それで根掘り葉掘り聞かれるのもマズい。


「そうしなさいな。まだまだ言い足りない分は、また今度ね?」


 まだあるのか……。今でさえ、そのすべてを受け止め切れていないのに、これ以上なにがあるんだよ……。


「さ、そうと決まったらとっとと行ってこい!」

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