56.域外の見立て 一
「そ、そうか」
「そうよ! と、何の話だっけ……そうそう、相楽さんが可哀想って話よ。いい? まず大前提として、アンタのいう罪悪感ってなに? 意味が分かんない」
「あの日の事故は千佳が誘ったから起こったことで、それを千佳は気に病んで」
「千佳が、アンタにそう言ったの?」
「それは……言ってない、けど」
でも、事故の前と後で千佳の性格は百八十度変わってしまっている。それを踏まえれば、罪悪感でと思うのは自然な流れだろ?
「そもそも罪悪感って決めたのは誰よ? どこからそういう話になった?」
「決めたっていうか、そうとしか考えられないんだよ……」
「は、やっぱりね。分かってないみたいだから教えてあげる。ずばり言うわ。アンタがそう強制させてんのよ」
意味が、分からない。強制? 俺が? いや、だって千佳は事故のトラウマからべったりするようになったんだぞ? え、あれ、なにを言ってるんだ、そんな。
「混乱してるようね。いいわ、丁寧に教えてあげる。相楽さんはね? アンタに悲劇のヒロインであることを望まれているから、そうしてるのよ。もっとわかりやすく言うと……。事故のトラウマでべったりするようになった幼なじみを演じているの」
「っ……」
ガツンと頭を殴られたようだった。開いた口が塞がらず、あまりの衝撃に視界がブレた。
「まったく思いもしなかったって顔してるわね」
なんら言葉が浮かばない。
上機嫌に小湊さんはなおも続ける。
「さぁてここで本題です。相楽さんが、どうして告白をなかったことにしようとしたのか、ですが、考えられる理由はひとつ」
知らず呼吸が浅くなる。鼓動が早くなり、喉はカラカラに乾いていた。
「篠森祐司。アンタを救おうとしてるんじゃない? そう、相楽さんはヒーローになろうとしてるのよ」
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