41.頼まれごと 一

「えっとね、祐司。コイツと太鼓打たせて貰ってたんだけどさ、その世間話で人手が屋台がピンチって聞いてね?」

 

 須藤もうんうんと首肯しゅこうして、小湊さんから話しをいだ。

 

「青年団って太鼓だけじゃなくて、祭り全体をみてるんだってな。戻ってきた団長と四谷さんの話を聞いちまってよ」

 

 須藤も神妙な面持ちをしているが、全く要領を得ていない。

 

「だからなんの話だって」

 

 青年団は夏祭り全体を取り仕切っている。これは昔からそうだし、屋台はもちろん会場の設営、当日運営も青年団だ。

 

「あー、なんだ。恥ずかしい話なんだがよ、祐坊。実はちょっくら当日の人手が足りなさそうなんだ」

 

 そうだな? とゲンジさんは四谷さんに確認し、今度は四谷さんが口を開いた。

 

「団長から割り振りを頼まれていたんだが、どうにも人手が足りなくて屋台を減らすことになりそうなんだ」

 

「屋台を減らす?」

 

「そうなんだよ篠森君。毎年、神社の境内を屋台村にしているだろう? あれは五十くらいの屋台が境内に集まっている形なんだが、うち六店は青年団の直営なんだ」

 

「人が足りないのはどうしてですか?」

 

「あー、青年団としてはいつも通りなんだけど……。ほら、警備に回す人を増やさないといけくてね」

 

 たはは、と乾いた笑いを浮かべる四谷さんに、小湊さんも腕を組む。

 

「大都会ならまだしも、こんな田舎で警備強化だなんてね。時代かしら?」

 

「あはは……」

 

「あ、ごめんなさい、そう意味じゃなくて、えぇっと」

 

「いいんだよ、田舎なのは事実だからね。けれど昔はそうじゃなかったんだよ? 田舎は田舎だけど、田舎なりに盛り上がって、人もたっくさん来てたんだ」

 

 ……。

 

「と、とにかく、それで屋台を減らさないといけなくなって、それでお困りだって聞いちゃったワケ」

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