35.練習具合 一

 体育館に戻ると、すでに個人練習が始まっていた。俺の姿を見つけた千佳が手を振り駆けてくる。


「おかえりなさい、祐司さんっ」


「ただいま」


「外は暑かったでしょう? こちらをどうぞ、熱中症対策です!」


 千佳は喜色を浮かべるままにペットボトルを差し出してきた。ちょうど喉が渇いていたところだ、礼を言い、促されるまま口をつけ、カラカラだった口中を潤した。


「ありがとう、千佳」


「いえいえ、当然のことですから。ゲンジさんもどうぞ」


「おう」


 ゲンジさんはキャップを開けるとグビグビと飲み、一気に中身を空にした。


「っぷは、沁みるなぁ。ありがとよ、嬢ちゃん」


「ゲンジさんが戻られるのをみなさん気にされていたんですよ。ぁ、飲み終わったペットボトルこちらで捨てておきますね。お早く戻られてください」


「おうよ、助かった。それじゃまたあとでな、祐坊!」


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