31.此花神社 一
由緒ある山岳信仰の社、
普段は裾野に広がる田や街並みを一望できるスポットとして近所の人の散歩コースとなっている。
そして背にする山からはより雄大な景色を望むことができるが。あの日、事故の現場となった高台だ。
「これは……」
「どうだ祐坊、新しい神社は」
白く輝く石の鳥居に整備された参道、入れ替えられたのか、境内の土も明るい赤茶色をしている。
その様相は去年までの古ぼけた、言いようによっては趣のある佇まいから変貌を遂げていた。
「いつの間に、どうしたんですかこれ」
「くっくっくっ、その顔が見たかったのよ!」
腕を組みゲンジさんは豪快に笑う。
「どうしたんですか、本当に」
俺が最後に訪れたのは去年の夏祭りだ。本殿こそ変わってないが、これまでより荘厳に見える。
「ここの一体整備を申請してたのよ」
「一体整備?」
「あぁそうさ、神社庁やお役所に掛け合ってたんだが、それがようやく通ってな。無い袖は振れねぇってことで今までかかっちまったが、ようやく見せれるようになった!」
「見違えましたね……」
「驚くのはまだ早い。見せたいものがあるって言ったろ? こっちだこっち」
揚々と歩くゲンジさんについて行く。と、ゲンジさんは参道を外れ、本殿の裏に回る。
「この先は……」
「おう。獣道があったところよ。あの日、お前らが歩いた道だ」
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