第2話 星に願いを
ホシノコに連れられて空を飛び、街まで来た女の子は「わあ」と歓声を上げました。
上空から見る街は色とりどりの電飾で彩られ、河原で見ていた川面と同じように、キラキラと輝いていたのです。
「君がずっとあの河原で過ごしている間に、街はすっかりイルミネーションで飾られて、星空みたいになってたんだよ。――まあまだクリスマスにはちょっと早いけどね。人間はせっかちだから」
ホシノコはくすくすと笑い、嬉しそうに女の子の顔を覗き込みました。
「ねえ、クリスマスは好き? 僕は大好き! ――ほら、いっつも一番てっぺんに星を飾ってくれてるから」
そう言ってホシノコは女の子の手を握ったまま、街の中心にある一番大きなクリスマスツリーの、金色の星の上に立ちました。
そしてどこに持っていたのか、服の中から光り輝く棒を取り出し、その棒を大きく振るいます。
――カンキロコロリン、カンキロコロン
「これは、願いを叶えるタクトだよ!」
ホシノコが言うと同時に、河原で聞いたあの奇妙な音が辺りに鳴り響きます。
振るったタクトからは眩い光と共に数えきれないほどの星が零れ落ち、そうして、にわかに信じられないことが起こりました。
零れ落ちた星の一つが女の子の前でみるみるうちに形を変え、その星は可愛らしい柴犬の姿になったのです。
「――ハナ!」
女の子が名前を呼ぶと、柴犬は女の子に駆け寄りました。その犬は、女の子がずっと会いたかった、ハナだったのです。
「ごめんね、ごめんね、ハナ……わたしのせいで……苦しかったでしょう?」
女の子がハナに触れると、その指先からハナのあたたかい感情が女の子の心に一気に流れ込みました。
ハナはやわらかいオレンジ色の光に包まれていて、それはハナの気持ちと共鳴しているかのようにあたたかで、女の子がハナを抱きしめると、そのオレンジ色は輝きを増してゆきます。
『あのね、あの日、お庭にいたあたしを、あったかいおふとんに入れてくれて、とっても嬉しかったよ。いっぱい遊んでくれて、いっぱい撫でてくれて、たまにおかあさんに内緒でクッキーをくれるカナちゃんが、大好きだったの。
あのね、あたしね、カナちゃんが笑ってるのが、一番好きなの。カナちゃんが嬉しいと、あたしも嬉しいの。だから、だから泣かないで?』
「ハナの願いは、君が、お家に戻ることだって。――聞き届けてくれる?」
そう言ってホシノコはまた、タクトを振りました。
――カンキロコロリン、カンキロコロン
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