第4話 影が動く

 あの後、誠人は自分の姉である千明 香織ちぎらかおりに彩歌の説明をするのに大変苦労したが、とりあえず彼女には今帰る宛がないとのことで居候させる許しを何とか得たのだった。

 香織は最初は戸惑っていたものの、事情を納得してくれたおかげでしばらく、彩歌とともに暮らすことになった。

 このいきさつについてはまた別の機会に語られることだろう。



 誠人と彩歌がともに暮らし始めて3日経ったある日。

 いつもと変わらない朝であった。少し変わったところがあれば、新しく住人が増えたということだろう。


「彩歌さん。ご飯できたよ」


「ありがとう」


 テーブルにはこれぞ日本という感じの朝食であった。白米に焼き魚、ワカメと豆腐の味噌汁といった献立であった。

 誠人は姉の香織が仕事で忙しいことから1人で食事をすることが多かったのだ。

 だから料理は割と得意な方ではあるのだ。

 テレビからは朝のニュースが流れていた。


「次のニュースです…。黒羽市でまた行方不明者がでました。捜索届が出されているのは16歳の女子高生 岡島 奈緒さんです。

 警察署に捜索届が出されているものの、未だ行方は分かっていません」


「またか…」


 この前から続いている多発する行方不明者に不安があった。

 自分の住む街が悪い意味で目立っていることに対してであり、またそれに憤りも感じていた。


能力者ホルダーが関係しているわ」


 死能力という異能を持つ人間それが能力者ホルダーである。


能力者ホルダーって結局どんな人間なんですか?」


 数日前にざっくりと聞いたが、それでも理解に至らなかったため、改めて質問をした。


「そうね。まず能力者ホルダーは全員臨死体験をしている。そして死能力と呼ばれる異能力を持っているの」


 もちろん彩歌もこの条件に当てはまっている。彼女であれば、死能力はあらゆるものを見通し真実を視覚する能力である。


「ちなみに私の死能力の名前は真実の双眼リアリティアイズって言うの」


「その名前ってどうやって付けられたんですか?」


 マンガなどでよく目にする異能力の名前というものの起源は普段読んでてあまり気にしないが、現実で目にすると気になっていた。


「私の能力名はある人から名付けられたの」


「へぇ…。ちなみに能力者ホルダーって他にもいるんですか?」


「いるわ…」


 ◇◇◇


「くっくっく…。今日も良い1日ですねー」


 男の周りににはおびただしいほどの血飛沫があった。そしてその近くにはつい先程まで生きていただろう屍が転がっていた。


「まぁ今回はちょっとやりすぎましたね」


 壁や建物周りについている血痕に苦笑いしていた。男は手に持っている杖を地面にトンと突いた。

 その瞬間男の影が動き出し、血飛沫などを吸い取るようにして跡形もなく消していった。


「くっくっく…。おや?」


 男は自分の背後何者かの気配があることを感じ取り、後ろを振り返った。

 そこに居たのは漆黒のフードの付いたローブを纏った人物がいた。身長は大体170後半くらいだろうか。


「随分と楽しくやっているようだな」


「これはこれは…。あなたのお陰で楽しくやらせて貰ってますよ」


 ローブの人物にハットをとり右手を胸にあてて深くお辞儀をした。

 そして頭を上げるとニコニコと張り付いたような笑顔を男はしていた。


「ところで私に何か御用ですか?」


が姿を消した…。お前に探してもらいたい…」


 鍵。ローブの人物が口にした言葉であるが、恐らく実際の鍵とは違うだろう。

 恐らくは何かしらその価値に値する人物のことを指していると考えられる。


って…そんな業界用語言われても私にはさっぱり分からないのですがね?」


 苦笑いをしつつ、ローブの人物に質問をした。


「この世の全てを知る重要な存在だ。と言っても殺人狂のお前には分からないだろうが…」


 殺人狂と言われて顔にはあまりでていなかったが、明らかにムッとしているのが伝わってきた。


「そうですね…の私には分からないので、具体的に教えて貰ってもいいですか?」


 男はわざとらしく殺人狂という自分が納得していない言われ方をわざとらしく強調して尋ねた。

 するとローブの人物は袖から紙を取り出し、それを男に渡した。


「ええっと…ほぅ?これがあなたの言う鍵ですか?」


「殺すなよ…」


 それを言い残すとローブを翻した瞬間姿を消したのだった。


「全く人遣いの荒い方ですね…」


 紙を見て不敵な笑みを浮かべていた。


秋山彩歌あきやまさいかねぇ……」


 その紙は彩歌の顔の写真のある経歴書のようなものであった。

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The Die ability〜闇夜に光る街〜 石田未来 @IshidaMirai

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