第2話 15年振りの町
――その日、農業大都市、《マンティウス》は大混乱に陥った。
《マンティウス》はここ10年でスラム街から大都市にまで発展した。
その理由にあるのは、山から流れてくる湧水に大量の栄養が含まれるようになったからであった。
農業が栄えることにより、人口は5倍に増え、平均寿命が40歳伸び、年に数百件あった犯罪も今年には、驚異の0件になった。
もちろん、農業が栄えるだけでそんなことにはならない。
「彼」がその湧水で体を洗っていた影響で、彼の多大な生命力の一部が流れ出していたのだ。
――その湧水が急に生気を失う。
人々は何故か、「水」が「死んだ」と感じたのだ。
水は「生きる」という概念がないのは誰もが知っている。
しかし、生命力が無くなった、ということは、漠然とした感覚で伝わってきていた。
人々は恐れた。
「我々は神の怒りをかい、生命を取り上げられたのだ」
そんな声があちこちで上がり始めていた。
◯
15年ぶりの町だ。
どれくらい変わったのだろう?
俺――ラルグは、そう考えながら、岩の上を登っていった。
「!! あ、あれが町、なのか?」
驚いた。
白色の家が城を中心に円を描きながら並んでいる。
15年前は貧困が蔓延る汚い家が乱立していたというのに、城が立つほど発展したのか。
「ん? あれは……」
その中に、見覚えのある旗が見えた。
幼い頃から入るのを夢見た、このあたりの最大のギルド『ビフレスト』だ。
「行ってみるか」
俺はその旗に向かって跳んだ。
1キロメートル跳んだ。
「あ………っ、しまった」
降り方を考えてなかった。
ギルドを通りすぎて、小道へ落ちていく。
落ちる前に……草木が生えても困るだろうし、《回復》を切っておこう。
「「バゴォォォォォォン」」
「いっ……てぇ……」
大きな音がしたからか、人が少し集まってきた。
「お、男が上から降ってきた……?」
うまく着地できなかったし、降ってきたと思われても仕方ないだろうな。
「大丈夫か? 凄い音がしたが……」
「問題ない。着地に失敗しただけだ」
「……ちゃくち?」
何か可笑しいことでもあるのだろうか。
もしや、ここには跳んできたらダメなのか?
捕まるかもしれんな。
「急用があるので、またあとで」
跳ぶのは……やめておくか。
「ま、待て!!」
俺はギルドのある方向へ走った。
途中で服を拝借しよう。
さすがに毛皮じゃ恥ずかしいからな。
数秒後、ギルドの前着いた。
「これが、俺が夢にも見たギルド『ビフレスト』……」
人が沢山いる。
何かイベントでもあるのか?
「おい!! そこの兄ちゃん!!」
ギルドから中年の男が出てくる。
「手、空いてるかい?」
「ああ。空いてる」
ギルドの仕事だろうか。
良い印象を与えておくと、入れるかもしれん。
「山からの湧水が「死んだ」って話知ってるだろ? そのせいでこの都市の機構が弱り初めてるんだが、そこに目をつけた魔物共が湧いて出てきてるんだ」
魔物か……
山で出会ったことは何回かあったな。
てか、湧水が「死んだ」ってどういうことだろう。
「そいつらを倒してくれる奴を今、誰でもいいから募集してんだよ。……そこでだ。この依頼をあんたに受けてほしいんだが」
願ってもない話だ。
チャンスを逃すわけにはいかない。
「わかった。受けよう」
「よし!! 決まりだな!! こっちで話は通してやるから待ってろ」
初めてのギルドからの依頼……楽しみだ。
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