自分しか回復できない落ちこぼれ回復士が自分を回復し続けてたら最強になった件
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第1話 始まり
名はラルグ。
彼は落ちこぼれだった。
――成果が全てのこの世界にとって、回復士というサポート役にもかかわらず自分しか回復できないのは、役立たずであったのだ。
◯
5歳の頃に冒険者を志し、毎日魔術の鍛錬を積んだ。
それで唯一覚える事ができた魔術が《回復》であった。
彼は喜んだ。
親にもとても喜ばれた。
回復士は数が少なく、大変貴重な存在。
強いギルドに引っ張りだこであった。
つまり、冒険者としての将来が確約されているということである。
貧乏な家庭であったため、それはさらに大きな期待を呼び起こした。
だが、それから1年たって彼は気づいた。
『自分しか回復できない』と。
もちろん親どころか親戚すらも落胆。
幼かった彼はその空気に耐えられず――家を出た。
行くあてはなかった。
でも、家にはいられなかった。
彼は遠くへ走っていった。
できるだけ遠くへ。
どこか見つからない場所に。
彼は確かめたかったから家を出たのかもしれない。
他人を《回復》をできない自分は本当に愛されているのか。
――でも、誰も追ってきている様子はなかった。
彼は決意した。
『絶対に強くなってやる』
彼はどこかの山奥に消えていった。
◯
15年後。
20歳になった。
彼の肉体は回復し続けた影響か、常軌を逸した強靭さを手に入れていた。
彼はそろそろ山を降りる準備をしなければならないと感じていた
彼は本当に自分が強くなっているのかわからなかった。
限界が来ていた。
潮時と思ったのだ。
もう強くなれない。
彼は降りる途中で足を踏み外し、崖から落ちる。
200メートルはあるだろうか。
途中で壁にぶつかり、擦り傷を負う。
地面に叩きつけられ、鼻の骨が折れる。
――しかし、彼の体には常に回復魔法が流れていた。
皮膚が一瞬で再生する。
鼻が一瞬で元の形に戻る。
彼にとって、これが日常茶飯事の常識であった。
普通なら200メートル落ちれば、擦り傷を負い、骨が折れるどころでは済まないのを彼は知らない。
彼の歩いた後には、あまりの生命力か花が咲き誇った。
最初は岩しかなかった山も、緑に溢れ、動物の住処となっていた。
彼はその動物に向かって腕を向け、力を込める。
腕を向けた方向にあった物は――彼の腕に流れる甚大すぎる生命力の影響で、「死」が与えられた。
彼は回復士は自分と同じことができると考えていた。
だから、自身の生命力がとてつもないということに気付くことはなかった。
彼はその動物を食べて、腹を満たした。
それでも彼はその生命力で何かを生み出すことはあっても、誰かを癒すことはできなかった。
それが彼自身を「強いのかわからない」と認識させた要因かもしれない。
彼にとって、「強い」ということは、他人を《回復》できる、という意味であったからだ。
彼は山を降りる。
15年ぶりの人間の世界――
彼の目にはどう映るのか、知る由もない。
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