第38話 新居探し
年末から年明けに向けて飲み明かしたはずなのに朝は皆きちんと食卓を囲む。
そんなお酒が強い相良家の面々。
「皆さん凄いですね・・・」
「あぁ義姉さんも酒強いしな・・・美香は無理しなくてもいいんだからな」
「は はい・・・」
「じゃ あらためて 明けましておめでとうございます。
今年のおせちは美香さんも作るの手伝ってくれたから美味しいわよ~」
とお袋の仕切りで相良家の年明け初の食事が始まった。
ちなみに年明けてから飲んだりおつまみを食べたりしてたのは一応ノーカウントらしい。そして・・・親父。。。お袋が仕切ってるからっていじけるな・・・
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「洋 今日って暇か?」
「見ての通り暇だよ。本当は式の準備とかしなきゃなんないんだけどさぁ、まぁ正月くらいな」
そう。おせち料理やお雑煮を食べて、お腹一杯になりコタツにもぐりこむと正直何もやる気が出ない。。。今年は寝正月にするぞ俺は。
美香も隣でみかん食べてるし・・・って美香も結構お餅食べてたけどみかんは別腹なのか?
「じゃあさ 前に頼まれてたお前たちの新居候補の物件いくつか見繕っておいたんだけど見て来るか?」
「おっ 探しといてくれたのか?」
「まぁな 2月、3月になると物件の取り合いになるから今のうちにってな。ついでに言っとくとうちの会社でまだ非公開の物件もあるから決めるなら早めにな」
「なるほど。悪いな何だか」
「気にするな。美香さんも大丈夫かな?」
「はい 色々とお手間お掛けしてしまって、ありがとうございます」
寝正月という俺の誓いはあっという間に崩れ出かけることが確定した。
「でだ・・・ついでと言っちゃなんだけど雄一君に頼まれてた物件も準備出来ててな、健吾君に連絡して物件の案内を頼まれてくれないか?顔見知りだしお前たちの物件の近所だからさ」
「ん?別にいいよ。健吾君に電話して連れてけばいいんだな」
「ああ。頼むな」
ということで今日は健吾君と待ち合わせをして物件を案内した後で俺と美香の新居を見て回ることとなった。
待ち合わせ場所の川野辺駅前に着くと健吾君は楓ちゃんを連れてきていた。
2人とも大人っぽいし何だか新婚さんを案内してるみたいだな。
健吾君達を案内した物件は、兄貴の会社で設計・建築をした物件で住居スペースに賃貸を併設した中々良く出来た物件だった。
川野辺の辺りは学生も多いので農家を辞めてマンション・アパート経営に乗り出す人も多く需要もあるだろうと試験的に売り出す予定の物件だそうだ。
「どうかな健吾君。中々いい物件だと思うんだけど」
中々のお勧めとして話をしてみたけど、健吾君が写真を雄一に送ったところまさかの即決。物件情報は兄貴が先に雄一にも送付してたらしいけど家を買うときのスピードじゃないだろ・・・
相変わらずせっかちだなとちょっと呆れながらも雄一には後で電話しておくと伝えて健吾君達とその場で別れた。
駅方面に向かって歩いていく2人を見ながら、近い将来今度は健吾君と楓ちゃんが2人で住む家も探したりするのかな。
などと思ったりしたけど・・・どうなのかな。
「じゃあ いよいよ次は私達の住む家ですよね」
「あぁそうだ。高い買い物だし即決する必要はないから美香も遠慮なく意見言ってくれな」
「はい。何だかこういうのってワクワクしますよね。今のマンションに住むときは情報誌で色々と調べたりはしたんですけど、最終的にお父さんの紹介で決めちゃったから実際に物件を見て回るのって実は初めてなんですよ」
「そっか。それは楽しみだな!」
確かに物件って見てるの楽しいもんな。
俺は兄貴の手伝いで一時期お客さんの内見案内とかをやってた時期もあったけど今だに物件を見るのは楽しみだからな。
物件の間取りを見ながら色々な生活を妄想したり。
美香にも今日は楽しんでもらわないとな。
ということで内見が初めてという美香を連れて俺達の新居探しが始まった。
でもさ、俺と美香が並んで内見してると不動産屋の担当者と初めて独り暮らしを始める社会人1年目くらいの女性に見えるよな(美香童顔だし・・・)
などと思いながら歩いているうちに1軒目の物件に到着。
雄一達の家(仮)から徒歩3分で川野辺駅や商店街からも徒歩10分弱の距離にある比較的新しいマンションだ。
「ここは中古物件だけど、築浅だし年末で前の住人は退去済だから内見も出来るぞ」
「はい。中古と聞いてましたけど綺麗なマンションですね。それに資料の通りオートロックで宅配ボックスもついてますし」
「資料ちゃんと見てきてるんだな。写真とかも必要だったら撮っておいてくれな。後で決めるときに使おう。それじゃ中に入ろうか」
「はい」
マンションは4階建てで物件は最上階の4階。
一応エレベータもついている。部屋は比較的ゆったりしたLDKに襖で仕切られた和室と少し小さ目ながらもクローゼット付きの洋室が2つの3LDK。
一般的なファミリー層向けの間取りで2人で住むには十分な広さだ。
「どうだ美香?中古だけど中も綺麗だろ?」
「はい。間取りも余裕があるので、寝室の他に私や洋さんの書斎と作れますしベランダからの眺めも良いですよね」
この辺りはまだまだ高層建築が無いから4階建でも結構眺望はいい。
ベランダからはちょうど川野辺高校も見える。
「美香。他に気になったところとかあるか?」
「キッチンやダイニング、それにお風呂も十分広いですし、強いて言えば寝室が少し狭いですかね・・・」
「確かになベッド並べると結構場所取りそうだしな」
「・・・・あの・・・ダブルベッドとかにはしないんですか?」
「え?ダブルでいいの?」(てっきりシングル並べてとか思ってたけど)
「し 新婚ですし・・・洋さんと一緒に寝たいかなって」
「そ そうだよな。うん今度ベッドも見に行こうな! じゃそろそろ次見に行こうか!」
そうだよな今だって同棲しながら1つのベッドで寝てるんだから結婚しても寝るベッドは1つでいいんだよな。
"いい歳して何照れてんだよ"とか雄一が居たら突っ込まれそうだけど俺もこういうのは慣れてないからな・・・
2軒目は今の美香の家に近い物件で、1軒目よりも高校には近いけどその分駅や商店街からは離れてしまっていた。
間取りは先程とほとんど同じで十分広かったけど新築物件ということもあり少し割高ではあった。
「どうだ?ここは洋室もさっきより広いし新築だけど」
「はい。設備はさっきの物件より良いですし新築だから綺麗ですけど・・・買い物とか不便そうですね。私が今住んでるマンションよりもスーパーとかコンビニが遠いですし」
やっぱり美香も気にしたか。
ここって去年畑を宅地化したところだから駅や商店からは遠いんだよな。
美香の通勤には便利だけど普段の生活にはちょっと不便かな・・・
そして、今日最後となる3件目。
ここは大樹先輩の家のすぐ近くで、雄一達に紹介した物件の近くらしいけど新築3LDKの戸建てだ。俺と美香の決めた予算を少しオーバーするけど兄貴としてはお勧めらしい。駅にも学校にも近いし立地も一番だしな。
「戸建てっていいですよね。実家に住んでた時はマンションに憧れましたけど庭がある家というか・・・ちょっとこういう家も憧れます」
「そうだな。ここはまだ非公開になってる物件らしくて兄貴曰くかなりお買い得らしい。予算は前に決めた額を少しオーバーするけど兄貴との交渉次第だろな」
「そうなんですか?ちょっとそういうこと聞くと考えちゃいますね・・・」
とリビングからまだ芝が養生中の庭を見ながら美香が悩んだ顔を見せていた。
確かに同じ3LDKでもマンションよりも全体的にゆったりした作りだし収納も多い。何より狭いながらも庭があるのはちょっと嬉しい。
将来、子供が出来たら庭にビニールプールだして水遊びしてあげたり、子供の友達も呼んでバーベキューしたり・・・色々と妄想しちまうな。
考えてみるかな・・・一戸建て。
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