第37話 年末年始の慌ただしさと③
大晦日。12月31日。
俺は朝から美香を伴って実家に帰省している。
といっても家から徒歩圏内だけどな。
「美香ちゃん この煮物の味付けはね・・・・」
「は はいお義母さん」
「美香ちゃん この料理の調理方法はね・・・・」
「はいお義姉さん」
実家に到着するなり母さんと義姉さんに捕まった美香は、台所で2人にレクチャを受けながらおせち料理作りをしていた。
『何だか大変そうだな』
と思いつつ俺はコタツに入りのんびりミカンを食べながらテレビを見ていた。
几帳面な兄貴は前日までに大掃除も終わらせていたし、実家に来てもこれと言って俺はやることないんだよな。
それに親父と兄貴は近所や取引先への挨拶という名の"飲み"に出かけてまだ帰ってこない。多分遅い時間に酔っ払って帰ってくるんだろう。
ということで俺は凄く暇なのだ・・・
----------------
「・・しさん・・ひろしさん・・・洋さん」
「ん?美香?」
「もう寝ぼけないでくださいよ。もう夕方ですよ」
「って俺寝ちゃってたのか」
「そうですよ。こんなところで寝てたら風邪ひいちゃいますよ」
「すまん・・・」
「はは 兄貴 美香ちゃんに怒られてる」
「ん?凛子も来てたのか」
「何寝ぼけてんのよ。。結構前に来てたけど兄貴が寝てただけでしょ」
「う・・・」
「ほらほら、そろそろお父さんも幸治も帰ってくると思うからお蕎麦ゆでるよ。洋もそろそろ起きなさい。あ、凛子。幸ちゃん呼んできてそろそろご飯だから」
「うん わかった」
お袋に凛子にお義姉さんに娘の幸ちゃん。それに美香。
5対1か・・・うちの家系って女の方が強いからな・・・美香も何となく馴染んできてるし・・・今って男俺一人だし何言っても敵わなそうなんだけど・・・
と思っていると
「ただいまぁ~」
「い~ま 帰ったぞ~」
「あらあら酔っ払いさん達。遅いおかえりで。
お蕎麦食べるから顔洗って酔い覚ましてらっしゃいな!
食べてくれないと片付かないでしょ!」
「「は はい・・・すんません」」
流石お袋・・・っていうか親父達弱すぎるぞ。
食卓に皆が並びお義姉さんや美香がテーブルにおそばを並べる。
もちろん蕎麦だけじゃなく、天婦羅や煮物等も豪華に並べられた。
「じゃお父さん」
「え~ じゃ家長として一言。
お陰様で家の会社の利益も上向いてます。来年も更なる売り上げを出せるよう皆で頑張りましょ!
それから今年はようやく洋が可愛い嫁さんを捕まえました。父親として本当に嬉しい。正直なところ洋に関してはもう諦めてた。うん駄目だと思ってた。
だからな・・・美香さん洋の事を頼みます。そして、ようこそ相良家へ!
といことで今年もお疲れ様でした!!いただきま~す」
「はいはい お腹空いたし食べましょねぇ~」
「「は~い」」
と明るく返事をして料理を食べだす女性陣。
美香だけちょっとオロオロしてるけど・・・まぁ気にせず食べてくれ。
「・・・なぁ母さんや・・・毎年思うんだが私の一言って必要なのか?」
『親父気にするな・・・毎年だしもう慣れただろ』
そんな一幕もありながらも年末恒例の赤白の歌合戦を見つつ年明けを迎えた。
「「あけましておめでとうございます」」
「じゃ今から酒盛りかな」
「お父さん飲んできたんでしょ?ほどほどにしといてくださいよ」
「だ 大丈夫だよ。な なぁ幸治」
「え?俺?ああ飲み過ぎは注意するよ。あ、幸は寝なくて大丈夫なのか?」
「うん。久しぶりに洋おじさんや美香さんが来てるしもう少し起きてる」
「おっ おじさん達の相手してくれるのか?
そういえば、幸ちゃん今年受験だろ?どこ受けるんだ?」
この辺りだと川野辺高校か森下学園かな?
「はい。川野辺高校を受験します。森下とどっちにするか悩んだんですが、部活でお世話になった先輩が川野辺高校に居るので」
「そうなんだ。いいとこだぞ川野辺高校は。
部活は確かバスケ部だよな?じゃあ美香わかるんじゃないか?」
「え?なんで美香さんが?」
「あ、私バスケ部の顧問やってるから。それに・・・一応バスケ部のOGでもあるのよ(万年補欠だったけどね・・・)」
「え~そうなんですか!川野辺高校の先生とは聞いてましたけど」
「そうなのよ実は。ちなみにお世話になった先輩って川野中卒のバスケ部だから鮎川さんとか小早川さん?」
「あ、鮎川先輩や小早川先輩にもお世話になったんですが大室先輩です!」
「え?大室さんなの?確かに面倒見いい子だけど何だか意外ね」
「私、中学からバスケ始めたんですごく下手だったんですけど、自分も最初下手だったからって先輩によく練習つきあっていただいて」
「へぇいい子だな大室さんって」
「前に文化祭で洋さんを案内してくれた1年の子ですよ。明るくて礼儀正しくて元気のいい子ですよ」
「ああ あの子か。確かに明るくて良くしゃべる子だったな」
「バスケ部でも活躍してるわよ。冬の大会でもレギュラー候補で活躍してたし」「そうなんですか!何だかやる気が出てきました。私も合格したらバスケ部に入りますので、その時はよろしくお願いします!」
「ええ。受験頑張ってね」
「はい!」
と満足したのか幸ちゃんは自室へ戻っていった。
・・・正直かなり部屋の中が酒臭くなってきたからな。
中学生がいるのに駄目だろみんな。
「美香も疲れただろ?よかったら先に休ませてもらうか?」
「あ、大丈夫です。私も何だか楽しくって。
私一人っ子だったしお父さん達も年末年始はお店開けてたから、こういう家庭的で賑やかな年末年始は初めてで」
そっか。確かに龍園は年末年始は深夜営業してたもんな。
店は賑やかだったけど、その分家では美香一人か・・・
「じゃ、俺達も一杯やるか!」
「はい!!」
こうして相良家の宴は明け方まで続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます