第24話 式場選び
季節は移り10月も後半。
俺達は今、結婚式を挙げるべく式場選びをしていた。
凛子のサプライズで急遽行われた結婚写真撮影。
タキシードとウエディングドレスを着たあの時、俺達は"結婚"という二文字をあらためて意識した。
正直なところ、婚約してお互いの両親や友人に紹介をしたことと今でも半同棲の様な生活をしていることから何だか安心してしまったというか、落ち着いてしまったというところもあった。
でも、写真撮影で具体的な未来を見せられ結婚を再び意識させられた。
本当、凛子や兄貴には感謝だな。
それについ数日前に田中と山口さん、それから西村ちゃんと及川も結婚式を挙げた。
もちろん俺達も式には呼ばれたわけだが、幸せそうな友人達を見たこともある意味刺激となった。
ということで、最近は2人で会うと某結婚情報誌やネット情報を見て色々と話をすることが多くなった。
「やっぱり、この間みたいなウエディングドレスは着たいなぁ~」
そうだな。ちょっと和式も捨てがたいけど、ウエディングドレスの美香は綺麗だったしなやっぱり洋式だよな。
「じゃ素敵な教会とかも探さないとな」
「そうですね♪でも、凛子さんの式場も素敵でしたよね。費用も安くしてくれるって言ってたし」
「そうだな。あそこは凛子が色々な式場を見て回って、良いところを取り入れて設計してるから地方の式場の割には使いやすいし、いいところだとは思うぞ」
「はい。凛子さんのセンスが良いのかもしれませんが素敵でした。あの会場ではダメなんですか?」
「まぁ確かにそれで何ら問題は無いんだけどな。ただ、女性にとって結婚式ってやっぱり大切なイベントだろ?後悔しないように美香の好きな形で式を挙げたいんだ」
「・・・ありがとうございます。本当洋さんって本当優しいですよね。何だか益々好きになっちゃいます♡」
「俺で良ければ、幾らでも好きになってくれ」
と何だか無駄にイチャつきながら、こうやって色々と調べるって行為そのものも楽しい。それに・・・多分初めから凛子のところに決めると『私がプロデュースする!』とか言って全部決めちゃいそうだし。
あいつのところで式を挙げるにしても、ある程度方針とかやりたいこと決めてから話をしないと・・・
ただ、年末が近くなると俺も仕事が忙しくなってくるし、美香も色々学校のイベントごとが多くなるそうだから、そろそろ方針やスケジュールだけは決めておかないとな。
と真面目に考えていたりはするんだけど、イチャつきながらお酒を飲んで、2人して寝落ちするのが最近のパターン。
本当駄目だな俺達・・・・まぁ楽しいけど。
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10月最終週土曜日。
来週末からは、美香が文化祭等の学校行事で時間が取りにくくなるということで、時間を作り凛子に会いに来ていた。
結局のところ色々と式場を見に行ったり案内をもらったりしたけど、コスパやロケーションなどを考えると凛子の式場が最適ということになった。
それに何といっても凛子に頼み込めば大抵の事は融通してくれそうという点も魅力だ。凛子も身内の式ということで張りきってくれそうだしな。
「お待たせ!うちの式場に決めてくれるんだって?」
と濃紺のスーツを着た凛子が例のレストランの個室に入ってきた。
「ん?スーツとか珍しいな」
「うん。ちょっと市のお偉いさんが来てたんだ。隣の敷地にホテルを建てる計画って前に話したでしょ?その関係」
何というか真面目な顔で話ししてると凛子って結構な実業家なんだよな。
この式場やレストランも初期投資は兄貴や俺が資金提供したけど数年で回収したし以降も毎年黒字で利益を計上している。
それにレストランは支店も展開してるみたいだし、式場も常に予約で一杯みたいだ。ある意味商才は兄貴以上なのかも。
「それにしても美香ちゃん!決めてくれてありがとうね。
お姉ちゃん頑張って美香ちゃんを素敵な花嫁さんにしてあげるから!」
「は はい。凛子姉さん。よろしくお願いします」
相変わらず、美香には姉押しで攻めてくるな。
立場的には義理の妹になるんだが・・・
まぁちょっと変な奴ではあるけどな・・・悪い子ではない。
ちなみに今日は、ここ数週間で調べた式の内容やドレス、料理等をどれくらいの予算で実現できるか?もしくは出来ないのか?を相談に来ていた。
凛子もここは経営者として俺や美香の話を聞き、真面目に答えてくれた。
普通はこの辺りの話になると専属のウエディングプランナーに任せているらしいんだけど、身内の式ということで忙しいにもかかわらず時間を作り凛子自ら対応をしてくれている・・・今度飲みにでも連れてってやるかな。
「じゃ、大体こちらが希望する内容は実現可能ってことでいいか?」
「うん。それ程難しい内容じゃないし、料理はシェフに相談してみるけど多分大丈夫かな。見積もりは部材等も関係するから、今聞いた内容をもとに何パターンか作って後でメールするよ」
「あぁ頼んだ。後は時期だけど年明けは混むのか?」
「う~ん。さっき調べた限りだと2月と3月の土日はほぼ埋まってたかな。1月は最終週が1件キャンセルが出たんで大丈夫そうだけどそこでいい?」
やっぱり結構繁盛してるんだな。
冬場は雪とか心配だけどあんまり遅くするのもな。
「美香。この日程でいいか?」
「はい。この辺りでしたら学校も土日は休めると思います」
「了解だ。じゃあ凛子。その日で予約してくれ」
「うん。じゃ予約の詳細も見積もりとあわせて送るね」
「よろしく」
1月か。何だか今から楽しみだな。
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