第20話 親父達と凛子

祭りの翌日。

昨日は結局、美香の家に泊まって・・・・まぁお察し。

そして今俺は美香と一緒に朝食を食べていた。


「出かけるのはお昼でしたよね」

「そうだな。凛子の店だし慌てなくても大丈夫だろ」


今日は、俺の妹である凛子と会う約束をしていた。

祭りの前の日に親父達に美香を紹介したんだけど、凛子は仕事の都合で会えなかったからだ。

親父達にも随分気に入られてたけど凛子にも気に入ってもらえるといいな。


-------------

少し戻って川野辺天神祭りの前日。

俺は美香を伴って実家の前に居た。


「あの・・・洋さんってもしかしてお金持ちのご子息だったりするんですか?」


俺と美香の前には大きな門を要する和風建築の大豪邸があった。

実家を大豪邸というのもなんだけど、普通の家の2,3軒分くらいの広さはあるし庭もかなり広い。


「いや、ただの成金だよ。うちの家系は元々川野辺地区の地主でな、親父の代で不動産業を始めて、今じゃ畑を売ってマンションやアパート経営もしてる。それが今のところいい感じに儲かってるだけだよ。

 それに不動産業は兄貴が継いだから次男の俺は、気ままなサラリーマンだ」

「そ そうなんですね。でも何だかこれだけ大きな家だと緊張します」

「確かに元農家だから家は広いけど、中に居るのは兄貴と両親だけだしリラックスして大丈夫だよ」

「それに俺の兄貴や親父達も美香の小さい頃の事知ってるみたいなんだよな」

「そうなんですか?あんまり覚えてないんですが。。。」

「まぁ4,5歳の頃だもんな。俺がバイトしたのも親父達が仲が良かったかららしいし」


これな。美香を連れて挨拶に行くことを話したら言われたんだけど親父と博嗣さん(美香の親父さん)とは町内会の役員同士で飲み仲間だったらしく、親父はよく美香の実家の中華料理屋にも顔出してたらしいんだ。

で、その流れで俺のバイト先として紹介してくれたらしい。


「まっ いつまでもここに居ても仕方ないし中入ろう」

「は はい」


と俺は美香を連れて門をくぐり、玄関を開けて家に入った。


「ただいまぁ~」

「お おじゃまします」


と家の奥から母さんが出てきた。


「おかえり洋。それにいらっしゃい美香さん」

「ただいま」

「あ あの始めまして。小島美香です」

「ふふ 挨拶は中でしましょ。みんな待ってるわよ」

「「みんな?」」


と母さんの後について、リビングへと移動した。


「おっ洋」

「美香 遅かったな」


と親父と何故か博嗣さんと奥さんの由香さんがソファでくつろいでいた。


「え?なんでお父さんとお母さんが?」

「いやな、今日この後うちに挨拶に来るって言ってただろ。

 文治さんに話したら、だったら家で両家顔合わせにしようってなってな」

「そういうことだ。洋たちもその方が1回で済んで楽だろ」

「はぁ・・・」


え~と楽は楽だけど、本人たち知らなかったんだけども・・・・

まぁでも親父の機転のおかげというか自分の両親が居ることで美香の緊張もほぐれ、和やかな空気で顔合わせを行うことが出来そうだ。

俺としては博嗣さんも由香さんも顔見知りだしな。


「しかしまぁ、うちの店でバイトしてた弟分がまさか自分の義理の息子になるとはねぇ」

「それを言うなら、おむつも替えてあげたことがある知り合いの一人娘が、自分の義理の娘になるってのも不思議な気分だぜ」


と親父。。。って美香のおむつ替えてあげたことあるんだ。


「ダメですよ!文治さん。美香ちゃん恥ずかしがっちゃいますよ」

「はは すまんすまん。でも、あれだな、美香ちゃん覚えてるか?

 小さい頃、洋に"お嫁さんにして”とか言ってたの。

 まさか本当にお嫁さんになるとは思ってなかったけどな」


と大笑いする親父。って美香がそんな事言ってたのか?

俺全く覚えてないぞ。


「え!私が洋さんにですか?」

「やっぱり覚えてないか。でも何故か洋に良く懐いてたんだよな」

「そうそう。洋君がバイトに来ると後を追い掛け回してたし。

 美香は覚えてないのか?」

「う うん」


やっぱり美香も覚えてないのか。まぁ俺も覚えてないしな。

などと色々昔話を盛り込みつつ両家で談笑をしていたわけだけど、途中からは、お酒が入りいつのまにやら宴会モードへと突入。

ある意味両家の親睦にはなったけど、結構グダグダな感じで両家顔合わせは終わった。

でも、博嗣さんから一言だけ言われた。


「洋君。君の事は信用してるが、美香を泣かせるようなことはしないでくれよ」

「はい もちろんです」


-------------


そして今。俺は妹が経営しているレストラン「響」に来ていた。

兄貴の支援で妹の凛子が設計から手掛けた結婚式場とレストラン。

川野辺地区には、こういったおしゃれな式場が無かったので結構評判になっているらしいし、今後は近くにホテルも建築する計画があるらしい。

っていうか、凛子も結構なやり手だよな。


「素敵なレストランですね。川北にこんなところがあるの知りませんでした。

 それに料理も凄く美味しいです」

「あぁまだ新しいからな。料理も評判で結構予約取るの大変らしいぞ」


と通された個室で用意された料理を食べながらくつろいでした。

凛子は接客中で少し遅れるということなので、食事を先に頂いていた。

食事を終え、食後のコーヒーを飲んでいるとドアが開き妹の凛子が部屋に入ってきた。


「洋兄!お待たせ」

「は はじめまして小島美香です」

「おお!あなたが美香ちゃんね。妹の凛子です。

 兄がいつもお世話になってます・・・・

 って何凄く可愛いんだけど、お兄ちゃん何処でこんな可愛いこと知りあったのよ。お兄ちゃんにはもったいないよ」

「落ち着け凛子! 可愛いのは間違いないが、落ち着いて話せ」

「もう~こういう可愛い妹欲しかったんだよ。

 美香ちゃん、これから凛子姉さまって呼んでね」

「は はい凛子姉さま」

「う~ん いい!!」


歳は俺の2つ下なんだけど相変わらず落ち着きが無いというか、妙にテンション高くないか?

それにしても"凛子姉さま"って・・・まぁ見た目だけなら20代って言っても違和感は無いから美香と姉妹に見えなくもないけどさ。

まぁ気に入ってくれたみたいで良かったけどな。


その後、すっかり凛子とも打ち解けた美香は、ラインのアドレス交換をするなど、すっかり仲良くなったみたいだ。

凛子はキャラが濃いからちょっと心配だったんだけど安心した。


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