第17話 お祭り①

今日は、美香と約束してた川野辺天神のお祭りがある。

仕事も何とか昨日までで区切りをつけた。

ということで気兼ねなく安心して美香とお祭りを楽しめそうだ。


「少し早く着きすぎたな」


時間までまだ30分以上もあったので、俺はコンビニで缶コーヒーを買い待ち合わせ場所で時間を潰していた。

それにしても美香に会うのも実は久しぶりだったりする。

メールや電話はしていたけど、それまで毎日の様に会っていたから、ほんの数週会えなかったの寂しく感じてしまう。俺も何だか変わったな・・・


ちなみに美香が浴衣を着てくると言ったので、今日は俺も久しぶりに浴衣を着てきた。少し渋めの浴衣だけど、馴染みの商店街のおばちゃん達には結構好評だったりするが・・・おばちゃん達目線なので、世間一般で実際はどうなのかは不明だ。


「あ あの洋さんお待たせしました?」

と美香がやってきた。何故か疑問形。


「ん? まだ待ち合わせ30分以上前だし全然待たされてないぞ」

「よかったぁ~ 私が時間間違えたのかと思いましたよぉ~」

なるほどそういうことか。


「美香を待たせるわけにはいかないし、何というか早く美香に会いたくてな」

「・・・ズルいです。それ私のセリフですよ」

「はは そりゃ悪かった。それより、その・・・浴衣似合ってるな」

「あ ありがとうございます。

 浴衣とか着るの本当に久しぶりで、今回は新しく買ったんです。

 褒めてもらえるとやっぱり嬉しいです」

 洋さんも・・・・その素敵ですよ」

「・・・・」

「・・・・」


あ~照れる!!!

お互いを褒め合って照れてるとか、ほんと初心な恋人同士みたいだけど、俺もこういうの言い慣れてないから普通に照れるんだよな。

だいたい、過去の彼女とも浴衣デートとかしたことないし。

それに美香の浴衣って俺と同じ藍色ベースなんで、一緒にいるとお揃いで買ったようにも見えるんじゃないか?

これで友人に美香を紹介とかしたら絶対にからかわれるパターンだろ。


「あの、、、どうかしましたか?」

「い いや大丈夫だ。予定より早いけど行こうか」

「はい♪」


ということで、色々心の葛藤はあったものの、予定を前倒しで俺達は祭り会場となる川野辺天神に向かった。


「友達とは天神様で会うんですか?」

「あぁ焼き鳥の出店やってる友達がいてな、そいつのところに集まることになってるんだ。お酒もあるぞ」

「いいですねぇ~。私焼き鳥大好きですよ」

「じゃたくさん食べてくれ」


祭りの夜は商店街や普段静かな参道にも露店が沢山出ている。

俺達は途中の露店を見たりしながら川野辺天神に向かった。


「え、もしかして美香?」

と美香同様に浴衣を着た女性の露店商が美香に声を掛けてきた。


「あ! 嘉美ちゃん」

「知り合いか?」

「はい。川野辺高校の時の同級生です」


美香より少し背が高めで元気そうに雰囲気の女性だ。

露店は雑貨やアクセサリーを販売している。


「ねぇねぇもしかして彼氏さん?」

「えっあの・・・」

「ええ。婚約者の相良です。僕も川野辺高校の卒業生なんですよ」

「遠藤 嘉美です。彼氏というより婚約者さんなんですね。

 美香とは高校の同級生で、今はこの裏の雑貨屋で働いてるんです。

 今日はお祭りということで出張営業してます!」

「へぇそうなんですね。じゃぁ何か1つ買わせてもらおうかな」


と露店に並ぶ商品を見渡した。

たくさんのアクセサリーが並んでいる中、花をあしらったかんざしが目についた。『美香の今日の浴衣に似合いそうだな』


「このかんざしを貰えるかな」

「あ ありがとうございます。

 すみません。何だか買わせちゃったみたいで・・・」

「いえいえ。美香の浴衣に似合いそうかなと思ってね」

「あ、確かに。美香後ろ向いて付けたげる」


と美香の髪にかんざしを付けた。

ん。思った通りだ。


「あ 本当だ色合いとか良い感じだ」

「本当? 洋さんありがとうございます!」

「どういたしまして。よく似合ってるよ」


「ところで、婚約者ってことはもう結婚秒読みな感じなんですよね?

 美香ってああ見えて結構寂しがり屋だし、何でも我慢しちゃうタイプなんです。

 私が言うのも変かもしれませんが、大切にしてあげてください」

「任せてください。美香いい友達を持ったな」

「うっ・・・美香いい人見つけたね。何だか私も惚れちゃいそう」

「ひ ひろしさんは私のです!でも嘉美ありがとね」


遠藤さんの露店を離れた俺達は、まず先に川野辺天神にお参りした。

正直ここの天神様に来たのは覚えてないくらい前だと思うけど、あらためて来ると中々静かで趣のあるいい神社だな。


「いつか恋人と来たいとは思ってたんですが、まさか今年来れるとは思いませんでした」

「美香もやっぱりこの神社の恋愛成就とか縁結びって信じてるの?」

「私は良いことだけ信じることにしてるんですけど、この神社はカップルが来れば、その縁が更に強固になるという話もあるんです。

 だから・・・洋さんとも来たかったんです」

「・・・何だか照れるなそういうの。

 でも大丈夫だよ。俺は美香しか見てないからな」

「・・・はい。ありがとうございます。その・・・私もです」

美香は耳まで赤くなりながら俺に抱き着いてきた。

はぁ~何だろう。いいのかこの歳でこんな可愛い子に抱き着かれるとか幸せ過ぎるだろ。


「・・・美香。抱き着かれるのは嬉しいんだけど。

 ここって結構お参りの人が来るから」

そう。ここは人気のスポットで、結構な人がお参りに来ている。

本当ならこのまま抱き合っていたいところだけど、スルーしてはくれているものの結構な数の人達が俺達を見ていた。まぁ結構恥ずかしい。


「ひゃ ひゃいゴメンなさい。ちょっと一人で盛り上がっちゃいました」

「とりあえず鳥居のところまで戻ろうか」

 

と俺は美香の手を取った。

自然と美香もその手を握り二人で鳥居の前まで戻った。

初心な恋人同士でもいいかな。

俺も美香も恋愛経験値はそれ程高くもないみたいだしのんびりとな。


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「ん?あれって小島先生じゃない?」

「だね。隣のおじ様は噂の彼氏さんかな?」


そんな2人は、しっかり生徒に目撃され、後で小島先生は、生徒にからかわれるのでした。

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