第16話 仕事が忙しいのです
<株式会社ライズ 企画3課>
「はい。そうです。もう少し原価下げられないですかね。
はい。その価格であれば今月で受注できそうです。よろしくお願いします」
先月相原が取ってきた案件。
中々大きな案件で利益も宣伝効果も大きいんだけど、クライアントの要求が厳しいうえに予算感が結構渋い。導入するハードウェアの価格交渉も大変だけど、サイト構築側もソフトウェアや画像のライセンス料諸々の手配で手間が掛かっているようだ。
「西村ちゃん そっちどうだ?」
「はい。何とか目標金額までは落とせそうですが、これ以上は厳しいです。
これ以上値引き交渉が入るようでしたら、こちらの人件費やデザイン料を調整するか、作業を内製化するくらいですかね」
「う~ん。出来ればそこは弄りたくないけど最悪それしかないな・・・
お、もうこんな時間か。西村ちゃんは上がっていいぞ。後は俺がやっとくから明日確認してくれ」
「でもまだ結構書類ありますし・・・」
「あんまり遅くなると及川が心配するぞ」
「・・・すみません。それでは先に上がらせていただきます」
「おぅお疲れさん!」
ということで、ここ数日は案件の価格調整やクライアントとの打ち合わせに追われて毎日終電間際の帰宅となっている。
お陰で飲みにも行けないし美香とも会えてない。
・・・何というか独り身の時は、残業も苦にならなかったし、家に帰るのも面倒な気がしてたけど、最近は早く帰って彼女に会いたいとか思ったりしちゃうんだよな。ほんと、まさか俺が・・・・とか思うけど何だか変な気分だ。
ところで、来週は川野辺天神で祭りがおこなわれる。
雑誌に載ったとかで恋愛成就、縁結びの天神様として有名なところだけど俺としては地元のまつり。例年地元の友人と飲み明かしていたが、今回は美香に一緒に行こうと声を掛けてある。この歳で恋愛成就のお参りというのも少々照れるが、友達に美香の事も紹介したいし浴衣姿とか見てみたいしな。
・・・ということで、来週祭りをゆっくり楽しめるように
「さぁて もうひと頑張りしますかね!」
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<川野辺高校 ~バスケ部~>
「は~い 今日はここまで。1年はボール片付けて掃除よろしくね」
「「はい!お疲れ様でした」」
部長の村田の声に従い1年生が片づけを始める。
今日の部活もこれで終わりだ。
以前から手伝いは時々していたけど全国大会後、私は正式に女子バスケ部の顧問になった。OGということもあるけど男子と兼任していた田中先生だけじゃ手が回らないということで頼まれた形だ。
「小島先生。来週の練習試合の件ですが・・・」
と小早川が声を掛けてきた。
「ん?東京女子学院だったよな。今日電話してスケジュール調整はしておいたよ。でもあそこ都内でも有数の強豪校だろ?よくアポ取りできたよな」
「はい。雫姉さんがOGということで話をしてくれて」
「え~と 田辺の従姉だっけ?」
「はい。それと牧村コーチの彼女です」
「なるほど、じゃまぁ小早川にとっては、どっちにしても親戚になるかもしれない人ってことだな」
「せ せんせい!!」
ふぅ。。。うちの部員は何というか彼氏・彼女持ち多いなぁ~
私の高校生活なんて部活とバイトに明け暮れて、彼氏どころじゃなかった気がするんだけど・・・
「あ、先生 そういえば・・・」
「ん?なんだ村田」
「この間、駅前で彼氏さんと待ち合わせしてたでしょ!」
「うっ・・・も もしかして見てたのか?」
「見てたのです! 凄くカッコいい彼氏さんですね。
どこで知り合ったんですか?」
・・・洋さんが"カッコいい"って言われるのは大歓迎だけど、生徒に恋バナ聞かれるとかダメでしょ。一応私も教師だし!
というかやっぱり駅前の待ち合わせとか目立つよね・・・
「教えてくださいよぉ~」
意外と食いついてくるな・・・仕方ないサラっと話して流すか。
「え え~と駅前の飲み屋でな・・・・」
「え!もしかしてナンパされたんですか?」
「い いや違う。店長の知り合いということで紹介されたんだよ」
というか何を私は生徒に話してるんだ?
「飲み屋で知り合って付き合うとか運命の出会いとかってやつですね」
「運命の出会い?」
「だって、たまたま先生と彼氏さんが同じ時間に同じ店で飲んでて、店長の近くに居たわけじゃないですか。十分運命の人ですよ」
「そ そうか?」
何か洋さんとの出会いを運命とか言われるの悪い気はしないかも。
でも、最近私も洋さんも忙しくて中々会えてないんだよなぁ。
洋さんも最近は帰りが遅いから呑兵衛横丁で一緒に飲めないし、土日も疲れて寝込んでるみたいだから声掛けるの悪いし・・・何だかちょっと寂しいな。
あ、でも来週の川野辺天神のお祭りは誘ってもらったし会えるはずよね。
浴衣も新しいの用意したんだから見てもらいたいし。
洋さん"似合うよ"とか言ってくれるかなぁ~
『洋さ~ん 早く会いたいよぉ~』
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