第12話 念願かなって
8月のとある土曜日。川野辺駅前 午前8時。
「おはようございます!」
「おはよう。何だか朝の早い時間に会うのは新鮮だね」
「そうですね。いつも夕方の居酒屋でしたからね♪」
そう。今日は付き合う様になって初の居酒屋以外のデート。
デニムのパンツに白のトップスと夏らしいさわやかなコーデの美香。
いつも川野辺の呑兵衛横丁で遅い時間に会っていたこともあり、何だ明るい日の下で見ると妙に眩しく思える。
この子が俺の彼女とか未だに信じられんわ・・・
「どうしたんですか?」
「え?あぁ何だか明るい時間に見る美香はいつも以上に綺麗だなと」
「・・・ま 真顔で変な事言わないでくださいよ。。。 照れます」
と美香は顔を赤くして俯いてしまった。
正直に言っただけなんだけどな。まぁ確かに照れるかw
「ごめん ごめん。でも正直な気持ちだよ。じゃぁ行こうか」
「うぅ~」
と美香は顔を赤くしたまま助手席に乗り込んだ。
今日は六景島方面へのドライブデートということで1日楽しんでくる予定だ。
川野辺からは1時間少々。
彼女も自動車が好きらしく、ドライブも凄く楽しみにしてたみたいだ。
川野辺駅前から市道を走り、国道を経由して高速へ。
走っている間も美香は、学校の事や学生時代の話などを楽しそうに話してくれた。自分も卒業した高校だし話を聞いてても面白い。そして何より美香が一生懸命に話をしてくれているのが嬉しく感じられた。
「何だか不思議な感じですね」
「ん?どうした?」
「少し前までは、飲み友達って言いながら毎日の様に居酒屋で会ってたのに今日はこんな早い時間にドライブしてるとか」
「確かにな。俺も美香をまた助手席に乗せることになるとは思ってなかったよ」
「ふふ 本当ですね。前に乗せてもらったときは、洋さん私の連絡先とかも聞かずに帰ろうとしちゃうから、もうこのままお別れなのかなとか思っちゃいましたよ」
「う~ん。あの時はまぁ色々あったし、早く居なくなった方が良いかと思ったんだよ。それがまさか連絡先交換して、こうしてドライブする仲になるとはね」
「はい。あの時連絡先渡して本当良かったです。いま凄く幸せですし♪」
「ありがとな。その幸せをもっと大きな幸せにできるよう俺も頑張るよ」
「私も頑張ります!ひろしさん♡」
などと”俺何言ってんだ"的なセリフも言ったりしながらドライブを楽しんだ。
「そういえば美香は六景島は行ったことあるんだよな?」
「はい、高校生の頃に同級生と遊びに行きました」
「俺が高校生の頃は、まだなかったんだよな。確か地名だよな?」
「はい。昔は無人島で六芒島って呼ばれてたらしいですよ。
なんでも、空から見ると六芒星の形に見えるのが由来らしく。それで、言い伝えでは、島の開拓で人が入ると色々と怪奇現象が起こったらしくて、怖くて長い間放置されていたらしいんです。それが、高名なお坊さんの勧めで六芒星の各頂点に祠を立ててお祓いしたところ怪奇現象が収まったみたいで・・・。でも六芒島って名前だと縁起が悪いとかで6か所から景観を楽しめる島ってことで六景島に名を変えてリゾート開発されたのが今の地名の由来らしいです」
「・・・何そのオカルトチックな話!」
「信じるか信じないかはあなた次第ってやつですね♪」
何処までが本当か、怪しさ100%の六景島にまつわる都市伝説を聞き終えたところで丁度六景島の最寄りインターに到着。
駐車場に車を停め、俺達は六景島リゾートへと足を踏み入れた。
六景島は水族館や遊園地、ホテルを要する複合リゾート施設で都心からのアクセスも良いため人気のデートスポットになっている。
今回は美香の希望もありこの施設を選んだ。
何でも生徒がデートで彼氏と行ったとか自慢してきたらしく、悔しいからいつか自分もとか思ってたらしい。大人げないけど何だか可愛いよな。
「じゃあまずは水族館かな」
「はい!」
駐車場から広い緑地を通り施設のランドマークにもなっている巨大水槽やイルカショーのプールがある水族館へと向かった。
「わぁ 洋さん 凄いですねここ」
「あぁ 海の中を歩いているみたいだ」
水族館の目玉でもある巨大水槽の中央を横断するように作られた強化ガラス製のトンネル。上下左右を魚が泳ぐ様は、本当に海の中を歩いている気分になれる。
「あっ エイですよ!エイ! 大きいですね」
「こんな近くで泳いでるの見れるとはな。最近の水族館ってすごいんだな」
水族館なんて何年も来てなかったけど、薄暗い照明に水に差し込む光の揺らぎ。
何というか雰囲気もデート向きだよな。
それにしても土曜というだけあって周りもカップルばっかりだ。
俺と美香も親子ってことは無いだろうけどカップルに見えてるのかな。
う~ん いかんな。。。年齢の事とか考えないことにしたんだろ俺。
考え出すと色々とネガティブなことを考えてしまう・・・
「あっ!もうそろそろイルカショーの時間ですね。この水槽も名残惜しいですが行きましょう!」
「そ そうだな楽しみだ」
そんな俺の想いを知ってか知らずか、恥ずかしそうに俺の手を取って走り出す美香。小さい手から温もりが伝わってくる。
「早く行きましょ洋さん!」
「あ あぁそうだな」
そうだ誰が何と言おうと美香は俺の恋人なんだ。
美香が俺が良いって言ってくれたんだからそれでいいんだ。
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