第9話


   とある海域にて


 一隻の帆船が、必死こいて航行していた。

 元々は十隻からなる船団だったのだが、敵の可燃性の矢によってこの一隻以外は沈没してしまった。

 奇跡的に残った一隻も満身創痍の状態だった。


 「今どこにいるんだ?」


 「さあ?方角的には南に向かってはいるらしいぞ。」


 「じゃあもうすぐ魔の海域か」


 「ああ、ただこの海域をとおらないと帝国に見つかるだろ。」


 「そうだな。じゃあいくぞ!皆、あと少しの辛抱だ!陛下の為、なんとしてでもたどり着くぞ!」


 『ウオオオオオオオオ!!』


 ···一時間後····


 「うわあああああ!」


 「もうダメだあ!」


 「おしまいだあ!」


 「逃げるんだあ!」


 先ほどとは一転魔の海域だけあって、船はこれまで経験したことのないような嵐に襲われていた。士気もほとんど残っていない。


 ドオオオオオオオン!!


 大きな波の影響で唯一残っていたマストもおれてしまった。


 「ああ、そんなあ···」


 水兵たちも最後を感じていた。

こうしてこの船は嵐の中、波に任せて航行するのだった。

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