第5話

 その花屋さんを出てから、私はすぐに後ろを振り返った。


もうここで、彼とは別れよう。


いつまでもぐずぐずしていても、申し訳ない。


「じゃあ、告白、がんばってね」


 彼はうなずく。


「また今度、結果を教えてね」


 彼の腕に抱えられた花束は、どんな女の子が受け取るんだろう。


「いいなぁ、私もこうやって、告白されたかったな」


「誰にですか?」


「好きな人から」


「いるんですか?」


「もうふられちゃったけど」


「えっ、いつです?」


 後輩くんは、驚いた声をあげる。


「今、この瞬間」


 せめて、にっこり笑って言おうと心に決めていた。


「今、目の前にいるキミに」


 彼の動きが、ピタリと止まった。


「ウソ! 冗談よ。ごめんね、大事な時に変なこと言って。じゃあ、がんばって!」


 さぁ帰ろう。


本当はずっと我慢していた。


こぼれ落ちそうな涙が、彼に見つかる前に。


「ちょっと待って下さい!」


 その声に、私は振り返る。


「好きです。僕とつき合ってください」


 目の前に、大きなバラの花束が差し出された。


『完』

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約束してるんです 岡智 みみか @mimika

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