第4話

店に入ると想像以上に中が広くて、色とりどりの鮮やかな花たちが、ところせましと並べられている。


「わぁ~キレイ!」


「花、好きなんですか?」


「花は嫌いなの?」


「僕はどっちでもいいです」


「相手の彼女のことを聞いてんのよ」


 そう言うと、うつむいて何かブツブツ文句を言い出したけど、相談相手に私を選んだキミが悪いんだから、仕方がない。


「あ、ほら、やっぱり告白するなら、バラの花束でしょ」


 店内の一角、ショーケースの中に鎮座する立派なバラたち。


「定番すぎません?」


「私だったら感動する」


 ベルベットのような、鮮やかな深紅のバラの花束。


一度くらい、こんな立派なバラの花束を渡されて、好きな人から告白されてみたい。


「これに決まり」


「えぇ~!」


「店にあるの、全部」


 そう言うと、彼は困ったような顔をする。


「やっぱり、やめとく?」


「でも今日、この後告白するって、決めてるんです」


「約束してるの?」


 彼はこれ以上赤くなれないだろうっていうくらい、まっ赤な顔をしてうなずいた。


「じゃあ、急がないとね」


 私に言われるがまま、彼はその腕に抱えきれないほどの、大きな花束を買い求めた。

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