第3話

「その人の好きなものは?」


「わかりません」


「聞けばいいじゃない」


「だから聞いてるんです」


「どんなタイプ?」


 彼は首をかしげると、ちょっと考えてから言った。


「なんていうか、その、ちょっとおっちょこちょいで、しっかりしてるけどどっか抜けてて、なんかこう、俺が守ってあげなきゃって思うタイプです」


 私は呆れた顔で、彼を見上げる。


「あんたに守ってもらわないといけないような女の子って、よっぽど抜けてるのね」


「まぁ、天然ですからね」


 うれしそうに、にこにこしながら照れ笑いするから、聞いてるこっちがバカらしくなる。


「お腹、すきません? なんか食べます?」


「は?」


「今日つき合ってくれたお礼に、僕がおごります」


「いらない」


「え? なんでですかぁ~!」


 歩調を早めた私を追いかけて、彼は隣に並んだ。


「どっかで、ご飯でもって思ってたんですけど」


「いいって、気にしないで」


「なんか、怒ってます?」


「キミにこれだけ信頼されてて、ホントありがたいわ」


「じゃ、じゃあ、先輩の好きな焼き鳥か、あ、手っ取り早くラーメンにでもします? どうですか? え、やっぱダメ?」


「いまダイエット中なの、あんたの用事を済ませたら、家に帰って一人で食べるから安心して」


 ふと見ると、目の前に一件の花屋さんがあった。


「花束は?」


「花束、ですか?」


 後輩くんの顔がゆがむ。


「だって、花束って、もらって困るものランキングの常連じゃないですか」


「うれしいものランキングの常連でもあるわよ」


「花束だけはやめろって」


「誰が言ってたの?」


「どっかのウェブニュース」


 私は迷わず、花屋に足をふみ入れた。

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