未来とは 第九部
「ここが、君たちのタイムカプセルを保存している場所だよ」
俺にとっては見慣れない場所であったが、きっと坂波さんや綾さんにとってはそれなりに思い出のある場所なのであろう。
最初はタイムカプセルというのだから校庭のどこかにでも埋めていると思っていたが、こうして倉庫にあると聞いてタイムカプセルとを掘り起こすという労働がないことに安堵している自分がいた。
三原先生が持っていた鍵を使って第二倉庫の扉を開けると、そこには様々な学校で必要なものが置かれていた。第二と言われているだけあって、置いてあるものの多くは古くなった机や椅子であったり、教卓なんかが置かれていた。そして、部屋の左右には木でできた棚があり、そこには古い資料のようなものであったり、チョークなどが置かれていた。
「私が持ってくるから、坂波達はここで待っていなさい」
「わかりました」
三原先生は俺達を倉庫の入り口のところで待たせ、一人第二倉庫の中へと入って行った。様々なものが置かれていることと、元々の倉庫の広さが狭いこともあり、あまり大勢が入るような場所ではなかった。タイムカプセルの所在を知り、なおかつそれを取りに行くだけなら、俺たちも入る必要はないと三原先生は判断したのだろう。
「てっきり、校庭のどこかに埋めていると思っていました」
「そうね。でも、それを始めると他の卒業生達も同じことをしてしまって、そこら中にタイムカプセルが埋められてしまうから、こうやって私たちの学校では倉庫で保存されるようになっているの」
「結構するんですか。タイムカプセルって」
「えぇ、私達の小学校ではほとんどしていた。私が知っているだけでも一つ上と二つ上だった六年生もしていたから、私たちもしようってなったの。緑川くんの学校ではなかったの?」
「えぇ。話題にすら上がりませんでした」
「時代、なのかしらね」
「一つしか違いませんよ」
「そうね」
「この学校でタイムカプセルを行うことが流行っていたのは私達の影響なんだよ」
三原先生が銀色の容器を抱えながら、倉庫の入り口まで戻ってきて、その容器を坂波に渡すと、倉庫の扉を閉めて、鍵で施錠を行う。
「タイムカプセルが流行っていたのが先生達の影響ってどういうことですか?」
「まぁ、教室に向かいながらでも話そう。どうせ思い出に浸るならそっちのほうがいいだろう?」
「そうですね。行きましょう。でも、教室って言ったら……」
「なんだ、私のことを気遣ってくれているのか? 坂波らしいな。だが、気にすることはない。これでも現役の小学校教師だ。しかも、今年も六年生を受け持たせてもらっている。今は夏休みだが、つい先月まで毎日のようにあの階段を上がっていたさ」
「そうですか、なら行きましょう。六年一組に」
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